つなごう医療 中日メディカルサイト

終末期の治療法や生活環境 ノートに希望書き留めて

(2016年2月9日) 【中日新聞】【朝刊】 この記事を印刷する

医療関係者作成 家族と思い共有を

画像「私の生き方連絡ノート」を記入する松本孝彦さん(中)と妻・洋子さん(左)。右は、書き方を助言する渡辺敏恵医師=横浜市内で

 人生の終末期にどういう医療を受けたいのか、自分の選択を書き残すエンディングノート「私の生き方連絡ノート」(エディテクス)が注目されている。患者が自分の気持ちをきちんと書き記せるように、医療関係者が配慮して作成した。(安食美智子)

 「治る見込みがなければ、気管切開や経管栄養はしてほしくない。(最期は)自宅で家族と密度の濃い時間を過ごしたい」

 横浜市鶴見区の松本孝彦さん(80)と妻の洋子さん(73)は、終末期に望む医療や生活の在り方をノートに書き残した。2012年5月、孝彦さんが重症肺炎による呼吸不全で生死の境をさまよった後、胃ろうで約1年間生活。「生還できたから、意思をしっかり残したい」と語る。

「私の生き方連絡ノート」の概略

 この時使ったのが「私の生き方連絡ノート」。医療関係者でつくる「自分らしい『生き』『死に』を考える会」(代表・渡辺敏恵東京女子医大非常勤講師)の手で、10年に作成された。

 渡辺さんによると、終末期医療を軸にしたエンディングノートは、欧州では既に広く取り組まれている。

 人生を振り返るページから始まり、急病や大事故などのときに望む治療や生活などを記入する。書き方、考え方のヒント(具体例)も盛り込まれた。

 終末期の治療法で「これだけは嫌なこと」の記入例には、「自分で判断させてもらえない」「必要でも苦しい検査は嫌だ」「闘病中に自分らしい生活ができない」などが挙げられている。

 「自分で意思表示ができなくなったら」という記入例には、「できるだけの治療を 蘇生措置も」「口から最期まで食べたい」「チューブからの栄養は望まない(望む)」「闘病6カ月を過ぎたら蘇生措置は望まない」などを例示した。

 「治療の選択や処置が、その人の希望に沿っているか分からない人々を多く見てきて、ノートの必要性を感じた」と渡辺さん。ノートに法的拘束力はないが、希望する医療行為や、判断を行う代理決定者などを事前に書面に残すことで「後悔のないみとりが可能になる」と言う。

 記述式にしたことにも意味がある。渡辺さんは「本人の求めるものがより具体的になり、希望に沿える場合もある」。例えば、自宅でのみとりを希望している場合、記述式で「少しでも戻りたい」という記述があれば、みとりは難しくても数時間だけ自宅にいられる場合もある。

 記入する時は、医療関係者から受ける治療のメリット、デメリットの双方を確認し、家族らとその治療や生活を選んだ理由、考え方を共有する過程が大事だ。渡辺さんは「ノートによって、遺族も本人の意思を尊重できたと気持ちの整理がつく。ノートを見て故人の生前の思いに触れると、大切な人をなくした悲しみに寄り添い、支えてくれる究極の『グリーフケア』にもなる」と活用を勧めている。

 「私の生き方連絡ノート」はB5判22ページ。497円。購入は、書店で注文するか、ネットショップで。

中日新聞広告局 病医院・薬局の求人