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卵子凍結 初の公費助成 病院倫理委、4人を承認 浦安市が少子化対策

(2016年3月13日) 【中日新聞】【朝刊】【その他】 この記事を印刷する
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 千葉県浦安市が少子化対策として順天堂大浦安病院と共同で進める卵子の凍結保存研究で、10日に開かれた同病院の倫理委員会が女性4人の卵子凍結を承認したことが、関係者への取材で分かった。健康な女性が将来の妊娠に備える卵子凍結の是非は妊娠率や健康へのリスクなどの点で学会でも見解が分かれる。「出産の先送りを助長する」との批判もある中、全国初の公費助成による卵子凍結が動きだした。

 凍結保存はがん治療の副作用などによる不妊を避ける理由で始まったが、晩産化が進む中、加齢で妊娠しにくくなる「卵子の老化」が知られるようになり、健康な女性も希望するケースが出てきた。一部医療機関で既に実施、大阪府の40代女性が凍結卵子で出産していたことが2月に判明した。

 市は2015年7月から共同研究を開始。15年度から3年間で計9千万円の補助金を交付する。対象は市内に住む採卵時20〜34歳の女性で、妊娠を目指すため凍結卵子を使う場合は、45歳までが原則。

 承認された4人は病院主催のセミナーで高齢出産のリスクについて説明を聞いた上で、倫理委の審査を受けた。同意書などの確認を経て採卵・凍結へと進む。

 これまでに開かれた7回のセミナーには約40人が参加しており、今後も共同研究の枠組みの下で卵子凍結が続く見通し。

 市によると、採卵や凍結、保管にかかる費用は1人当たり50万〜60万円程度。補助を受ければ自己負担額は注射や投薬など10万円程度になる。

 卵子凍結をめぐっては、日本産科婦人科学会の委員会が昨年2月までに、妊娠率が高くないなどとして、「推奨しない」との見解をまとめた。一方で、日本生殖医学会の指針では容認されており、賛否が分かれている。

 卵子の凍結保存 排卵誘発剤などで卵巣を刺激し、採取した卵子を液体窒素の中で凍らせ保存する。解凍すれば体外受精が可能で、受精卵を子宮に戻して妊娠、出産を目指すことができる。加齢による「卵子の老化」で妊娠がしにくくなることを避けるため、健康な女性の間にも凍結保存への関心が高まっている。ことし2月、独身時代に凍結した卵子で大阪府の40代女性が出産したことが判明。健康な女性の出産例が明らかになったのは国内初。

 納税者の理解が必要

 中塚幹也岡山大教授(生殖医学)の話 将来の妊娠に備えたい健康な女性の卵子を凍結保存することは、女性の生き方で選択肢の一つになり、卵子凍結への社会的な肯定感も徐々に増してはいる。ただ、出産や育児をしやすい環境を整えるため、行政が取り組むべきことは他にもある。性別や世代、子どもの有無など人によって受け止め方に差があり、税金を投入するとすれば公平性の問題も生じる。行政は少なくとも、納税者の一定の理解を得ることが必要だ。

仕事と出産 両立厳しく苦悩 希望者「選択肢になる」

 千葉県浦安市が税金を投入する卵子の凍結保存研究が本格化した。専門家の賛否は分かれるが、将来の妊娠に備えて凍結保存を希望する女性は少なくない。背景の一つには、仕事と出産育児を両立できる社会環境が整わないことへの不満や苦悩がある。希望者からは「選択肢になる」と期待の声が上がる。

 浦安市と共同研究を進める順天堂大浦安病院は2015年7月から希望者向けにセミナーを実施してきた。2月のセミナーで市内の女性会社員(34)は「痛いですか」「(採卵の)リスクは」などと何度も医師に質問した。

 岐阜県出身で京都の大学に進み、留学して英語も学んだ。医薬情報担当者(MR)として就職、仕事に没頭して管理職になった。「気が付いたら34歳だった」

 キャリアを捨てて子育てを選び、退職した友人や同僚をたくさん見てきた。「子どもを育てながらキャリアを積める社会ではない。女の幸せはいまだに、二者択一なのが現実」と考える。

 交際相手との結婚は視野に入れているが、まだ先。「両親に孫を見せたいし、将来は子どもがほしいが仕事もあり、今すぐは産めない。年を重ねれば『卵子の老化』で産めなくなるかもしれない」と訴えた。

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