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優芽が生きた証しに

(2016年3月18日) 【中日新聞】【朝刊】【その他】 この記事を印刷する

名古屋小児がん基金 両親 命の継承期待

画像遺影を掲げ、柳田優芽ちゃんへの思いを語る父隆さん(右)と母陽子さん=名古屋市南区で

 日本有数の小児がん研究機関・名古屋大医学部小児科を応援するために発足の見通しとなった「名古屋小児がん基金」。小島勢二教授らが基金づくりを思い立った原点は、昨年1月に2歳で亡くなった柳田優芽(ゆめ)ちゃん=名古屋市南区=だ。(編集委員・安藤明夫)=<1>面参照

 優芽ちゃんは難治性の急性リンパ性白血病で、骨髄移植と臍帯(さいたい)血移植を受けたものの再発した。残された唯一の手段は、白血病細胞を殺す遺伝子を患者本人のリンパ球に組み込み、増殖させて体内に戻すCAR−T療法。名大医学部小児科で研究を進め、臨床応用の目前まで来ていたが間に合わず、既に同療法が導入されている米国の病院での治療を目指した。

 しかし、提示された金額は「前金で1億5千万円」。「名大なら、50万円でできるのに」とスタッフはぼうぜんとした。その後、善意の輪が広がり、1億1400万円の募金が集まったが、米国病院の事情や、優芽ちゃんの病状悪化により、願いはかなわなかった。募金は、両親が闘病の子たちのために寄付した。

 名大の同療法は、米国とは違う手法。現在は国の許可を待って患者への投与が可能な段階に達している。

 名大で進めているさまざまな研究を充実させ、臨床応用を早めることが基金の目的。小島教授は「大学なら低コストでできる先端医療が、投資家の利益を優先する製薬企業だと100倍以上になってしまう」と指摘、「小児がん拠点病院である大学病院として、研究を目の前の患者さんに生かせる仕組みが必要と痛感した。産学協同を進める国の方針とは異なるかもしれないが、市民の協力を得て進めたい」と話す。

 代表的な小児がんである急性リンパ性白血病では、日本の治療成績は伸び悩み、5年生存率が81%と、欧米主要国に10ポイント前後の後れを取る。患者の再発リスクを確かめる際、欧米では遺伝子検査で白血病の残存細胞の有無を確かめるのが一般的だが、日本では一部の症例にとどまっていることが影響している。

 名大では、次世代シークエンサー(DNA解析装置)を使い、欧米を上回る精度で残存細胞を検出する方法を開発して診療に役立てており、こうした先進的な検査の費用にも基金を充てたいという。

 基金の準備会には優芽ちゃんの両親も参加。父・隆さん(42)は「基金ができれば、優芽が生きた証しになり、とてもうれしい。新しい臨床研究で子どもの命が救われたというしらせを、早く聞きたい」と話した。

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