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最上段 思わず「怖い!!」

(2016年3月17日) 【中日新聞】【朝刊】【その他】 この記事を印刷する

「組み体操」本当に危ないの?

画像日体大の荒木達雄教授(左)の指導で4段ピラミッドの頂上に乗った筆者。最下段左から2人目は内田良・名古屋大准教授=名古屋市天白区の名城大で

 小中学校で事故が多発して社会問題化している組み体操。記者(36)は危険性を指摘する記事を書いてきたが、実は組み体操を一度もしたことがなかった。本当に危ないのか自分自身で確かめようと、組み体操事故問題の第一人者である名古屋大の内田良准教授(40)と、ピラミッドと呼ばれる技に挑戦した。(細川暁子)

 組み体操は、協調性や一体感がはぐくまれるとして、多くの小中学校の運動会や体育祭で実施されている。だが三重県内の公立小中学校に通った記者は、組み体操をせずに育った。

 今月2日、国際体操連盟役員を務める大御所の荒木達雄・日本体育大教授が、体育が専門ではない学生たちに組み体操の正しいやり方を教えると知り、参加させてもらうことにした。

 向かった先は名城大薬学部(名古屋市天白区)。荒木教授によると、人間が積み重なる技は正式には「組立体操」と呼ばれる。そのうち、四つんばいになった人が積み重なるのがピラミッド。学習指導要領には記載がなく、実施は校長の裁量に任されている。高さ7メートル超の10段まで実施する学校もあり、骨折などの事故が多発している。

 ピラミッドは上段は落下の可能性があり、下段は重みがのしかかる。「小中学生なら3段が妥当。日体大体操部でも4段までが限度」(荒木教授)ということで、学生に交じって4段ピラミッドを組むことになった。記者は最上段、内田准教授は最も負荷がかかる最下段中央に挑戦した。

 最下段の1段目4人、2段目3人、3段目2人、最上段1人の計10人で、下から順に組む。四つんばいになって手足でしっかりと“柱”を作り、上段の人は下段の人の間に位置するのがポイントだ。

 四つんばいの内田准教授らの上に、学生たちが乗っていき、3段目が完成すると記者の出番。学生の背中を横から踏み、急な階段を手足を使って登るように頂上を目指した。踏まれた学生が、痛さで顔をしかめるのが見えて心苦しかった。

 最上段は高さ3メートル近くになる。頂上で四つんばいになると、下の段の人の背中がグラグラ揺れて、思わず「怖い」と叫んでしまった。

 一方、重さに耐えかねた内田准教授からは「あー」「うー」といううめき声が漏れ聞こえ、「苦しい」という心の叫びが伝わってくる。もし下段が崩れたら、自分も落下しかねないと思い、ぞっとした。結局、最上段に乗っていたのは30秒ほどだろうか。急いで下りた。

 内田准教授の感想は「尋常じゃない重みで、全身がつぶれそうだった」。最上段の記者の存在など全く頭になく「とにかく早く終わってほしかった」という。体重が平均50キロとすると、内田准教授には約106キロの負荷がかかっていたことになる。記者も内田准教授も、身の安全を守るのに精いっぱい。残念ながら、一体感は得られなかった。

 今回は体育館で行ったが、運動会は校庭で行われ、最下段の人は膝に小石が食い込んで痛いことも忘れてはいけない。上段に目が行きがちなピラミッドだが、下段にこそ過度な負荷がかからないよう配慮してほしい。

 どれぐらいの重み、高さになるか大人が試すことも大事ではないか。内田准教授のうめき声が耳に残り、4段ピラミッドの最下段中央に入るよう言われたら断るだろう。でも、学校の子どもはそれができない。

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