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「てんかん 正しい理解を」

(2016年3月25日) 【中日新聞】【朝刊】【その他】 この記事を印刷する

企業で働く患者ら訴え

画像同僚と打ち合わせする前田直行さん(右)=名古屋市中区で

 意識を失ったり、けいれんを起こしたりするてんかん。偏見や差別は今も根強いが、てんかん患者であることを自ら表明し、病気への理解を求める人も出てきた。26日のてんかん啓発日「パープルデー」を前に、「安心して病気を明かせる社会になってほしい」と訴える。(山本真嗣)

 「意識が戻ったとき、社内がざわついていないのがうれしかった」

 会員制ホテルなどを運営するリゾートトラスト(名古屋市)人事部で働く前田直行さん(46)は、てんかんの発作が起きた時の同僚の冷静な対応に感謝する。

 小学校のときに発症。現在、発作は1週間〜10日に一度で、顔が真っ青か真っ赤になり、左手が震え、目を見開いて一点を凝視する。時間は1分ほど。時折意識を失うが、倒れたりけいれんしたりすることはない。発作を減らす薬を1日3回服用。睡眠不足とストレスが発作を誘発するため、午後9時半には寝る。

 9年前、障害者枠でフルタイムの契約社員として入社。面接時に「発作が起こってもすぐに治まる。驚かないで」と伝えていた。体調が悪いときは障害者専用の休憩室で休めることで、気持ちが楽になった。

 当初は障害者専門の部署で、ダイレクトメールの作成など事務の補助に従事。まじめな仕事ぶりが評価され、現在は健常者と同じ職場で、社員の福利厚生に必要な証明書の発行などを担う。

 人事部長の佐々木征磁さん(51)は「重要な戦力で、業務に支障が出たことは一度もない」。前田さんも「働くことで生活リズムができ、発作も減った。働くことが生きがい」と話す。

 すずかけクリニック(名古屋市千種区)院長で、てんかん専門医の福智(ふくち)寿彦さん(51)によると、発作の出方は人によって大きく違う。意識のなくならない一瞬の発作や、短時間ぼんやりするだけなど軽微なものも多い。

 患者の7割は薬の服用で発作を抑えられ、健常者と同じ生活を送ることができる。だが「突然意識を失うというイメージだけが先行し、就労などで差別を受けることも少なくない」。症状を抑えられているのに内定を取り消されたり、不本意な異動を命じられたりすることもあるという。

 前田さんも高校卒業後の就職活動で、数百社に当たったが面接も受けられなかった。今も、患者による交通事故があると、周囲からどのように見られるのか不安だ。「患者が積極的に社会に出て、病気のことを知ってもらう必要がある」と話す。

あす啓発イベント

 パープルデーで患者を応援する気持ちを表現するには、紫色のものを身に着けることが提唱されている。26日午後1時半からは、名古屋市瑞穂区の市博物館で啓発イベントがあり、専門医がミニ講座や個別相談会を開き、アイドルグループがダンスを披露する。問い合わせは、主催の全国てんかんリハビリテーション研究会=電052(741)8900=へ。

 てんかん 脳の神経細胞が一時的に過剰に働いて症状が出る神経疾患。国内に100万人の患者がいる。生活に支障があれば、精神障害者保健福祉手帳を取得できる。運転免許の取得には一定の制限があり、医療職など精神障害への欠格条項のある資格や職業が制限される場合がある。

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