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仕事と治療両立支える 名古屋第二赤十字病院 赤羽和久さん

医人伝

(2016年4月26日) 【中日新聞】【朝刊】 この記事を印刷する

名古屋第二赤十字病院(名古屋市昭和区) 乳腺外科副部長 赤羽和久さん(45)

画像患者から復職の朗報を聞き、笑みがこぼれる赤羽和久さん

 「仕事は辞めなくても、いいですよ」。働いている患者にがんを告知するとき、必ずこう伝える。顔を見据えて穏やかに。

 告知後には、復職までの道のりを記した「治療計画書」を手渡す。手術や抗がん剤、放射線などの治療内容や、その予定時期が一目で分かる。患者は計画書を参考に、職場に病状や必要な配慮を説明する。

 医療の進歩でがんの生存率は大きく伸びた。だが、告知を受けて動揺した患者が自ら仕事を辞めたり、がんの知識がない会社に辞めさせられたりするケースは、今でも少なくない。仕事を失えば、家庭の収入は大きく減り、治療をやめてしまう人も出かねない。そんな現状を変え、がんと闘う患者たちを支えたいと考案したのが計画書だ。

 仕事と治療の両立を支援しようと思い立ったのは、鉄道会社で産業医をしていた30代のころ。心の病気で休職した社員の職場復帰プログラムを、精神科医と一緒に作った。もとは外科医で、多くのがん手術をしてきたため「がんになると仕事はどうなるのか」と、かつての患者たちを思った。

 同じころ、仕事が生きがいというベテラン男性運転士が、進行胃がんの治療で運転できなくなった。同僚たちも続けてほしいと会社側と協議し、男性は業務に復帰。乗車して若手を指導する仕事を定年まで続け、その数カ月後に亡くなったが、家族は会社に深く感謝していた。

 ところが、病院の外科医に戻って出会った患者たちは違っていた。比較的生存率が高い乳がんの専門医となったが、アンケートをとった患者の2割は仕事を自ら辞めるか、退職に追い込まれており、その半数は告知の直後のことだった。「がん=死」のイメージはまだ強く、患者と会社の情報共有は進みにくい。それが原因だと感じた。

 そこで、東海地方の外科医180人に聞いて治療方法ごとに社会復帰できるめどを調べ、4年前に治療計画書の原形を作った。2月に国が公表した、がん治療と仕事の両立のための企業の指針作りにも携わった。

 長野県伊那市(旧高遠町)出身。結核や脊椎カリエスを病んだ父が、風呂場で手術痕を見せ「先生が助けてくれた」と話すのを聞いて、外科医を志した。

 「復職できました」。この春、満面に笑みをたたえた患者からうれしい報告を聞いた。何よりのやりがいだ。 (山本真嗣)

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