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原因不明の頭痛、目まい 脳脊髄液減少症を疑って

(2016年5月3日) 【中日新聞】【朝刊】 この記事を印刷する

転倒など外傷も一因

画像髄液漏出付近に血液を注射するブラッドパッチを実施する高橋浩一医師=東京都港区で

 交通事故やスポーツで頭部や背中を強く打つなどして起こる脳脊髄液減少症。脳や脊髄にある髄液が漏出することで、頭痛や目まいなどが続くが、原因の特定や診断が難しく、心の病と誤診されることも多い。自分の血液を注射する治療法「ブラッドパッチ」が4月から保険適用になったことを受け、医師や患者は「病気への理解を深めてほしい」と訴える。(細川暁子)

 脳や脊髄は硬膜で覆われており、その内側は髄液という水分で満たされている。だが何らかの原因で、硬膜から髄液が漏出して脳の位置が下がってしまうのが脳脊髄液減少症。頭痛や目まい、吐き気などの症状が出る。国内では少なくとも年間1万人が発症しているとみられる。

 主に子どもを診療している千葉県松戸市立病院小児脳神経外科部長の宮川正医師は「子どもの場合は、学校体育の倒立や風呂場で転ぶなどしたケースがほとんど」と言う。

 診察では、コンピューター断層撮影(CT)や頭部の磁気共鳴画像装置(MRI)、微量の放射線を放つ薬品を腰から入れて画像装置で確認する検査を組み合わせて、髄液の漏出を確認する。

 ただ、髄液が漏出すること自体に否定的な意見も多く、脳外科医や整形外科医の間で長年論争が繰り返されてきた。病気の認知度は低いまま、適切な診断を受けられずに病院をたらい回しになる例もある。

 関東地方に住む高校3年の女子生徒(17)は、2014年の秋ごろから頭痛や目まいに悩むようになった。前向きで我慢強い性格だったが、ふさぎこむようになった。大学病院の脳神経外科を受診したが、MRI検査で異常は見つからず「思春期特有の心の病」と診断された。だが心療内科を受診しても改善しなかった。

 偶然、知人から脳脊髄液減少症について聞き、15年夏に山王病院(東京都港区赤坂)脳神経外科を受診。検査で髄液漏出が見つかった時は「やっと原因が分かった」と母親と一緒に泣いたという。女子生徒は強い外傷を受けたことはなく、髄液漏出の原因は不明だ。

 同科副部長の高橋浩一医師は「原因が分からずに治療が遅れ、不登校や引きこもりになってしまう子どもも多い。病気を知ってほしい」と訴える。

ブラッドパッチ 保険適用に

ブラッドパッチ治療

 ブラッドパッチは、自分の腕静脈から採取した血液20〜30ccを漏出している付近に注射する=イラスト参照。血液の凝固作用で、硬膜からの漏れをかさぶたのようにふさぐ。山王病院では年間約200人がブラッドパッチを受け、75%は目まいや吐き気などの症状が軽減した。今年1月に国の標準的な治療として認められ、4月から保険適用になった。高橋医師は「保険適用を機に治療する病院が増えるのではないか」と期待する。

 一方で課題も残る。保険適用となるのは、国の研究班による画像診断基準で漏出が確認できた場合のみ。高橋医師によると、同様の症状を訴え、脳脊髄液減少症が疑われる患者のうち、はっきりと画像で確認できるのは半数程度。高橋医師は「髄液の機能や減少する理由は不明な点が多い。今後も研究を続けていく必要がある」と話す。

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