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補聴器の聞こえ方調節を

(2016年6月1日) 【中日新聞】【朝刊】【その他】 この記事を印刷する

買いっ放しではダメ

画像補聴器をパソコンに接続し設定する店員。一人一人に合わせた調節が大切だ=名古屋市中区のリオネットセンター栄で

 「高齢の母が補聴器を購入したのに、いろいろ理由を付けて装着しないんです」。本紙生活部にこんな悩みの声が寄せられた。せっかく補聴器を買っても聞こえがそれほど改善されず、「生活に支障はない」と、着けなくなってしまう人は多い。一人一人の聴力に応じて適切に調節することが大切だ。(稲田雅文)

 中部地方の80代の女性は、テレビの音や会話が聞き取りにくくなったため、耳の穴に収まるタイプの補聴器を購入した。価格は約30万円。しかし、しばらくして着けなくなった。

 50代の娘は「新聞をめくる音などの生活音がうるさいらしい。高かったのに」と肩を落とす。購入した補聴器専門店も「慣れてもらうしかない」と言うだけという。

 加齢による難聴は、母音よりも高い音の子音が聞こえにくくなり、例えば「加藤さん」と「佐藤さん」の違いに自信がなくなる。耳が聞こえないと、外出したり人と会ったりするのが面倒になり、体力の衰えや認知症の引き金になる場合もある。

 近年主流となっている音をデジタル処理するタイプの補聴器は、雑音を拾ったり音がひずんだりすることが減った。一人一人の聴力に応じて、高音や低音の音量をきめ細かに調節できる。

 ただ、補聴器を購入しても、すぐに聞こえるようになるわけではないという。「何度か調節する必要があり、人によっては満足できるまでに2、3年かかることもあります」。補聴器販売店の「リオネットセンター栄」(名古屋市中区)店長の仲谷芳美さん(35)は話す。

 補聴器を着けて35年になる同市内の女性(70)は、補聴器を着けるまで、仏壇のお鈴を鳴らしても響く余韻が聞こえず、ガスレンジを着火する際の「カチカチカチ」という音が分からなかった。何度も販売店に通った結果、スムーズに会話できるほどになった。

 「どういう状況でどんな音が聞こえないか、何がうるさいかなどを話してもらえれば、多くの場合は調節できます」と仲谷さんは強調する。

まず相談医へ

 日本補聴器工業会(東京)は、「耳が聞こえづらい」と感じているのは全国民の11.3%に当たる1430万人と推計する。しかし、実際に補聴器を利用しているのは、このうちの13.5%にすぎず、欧米先進国(30〜40%台)に比べ低くなっている。

 耳の衰えについてはあまり深刻にとらえない人が多いためという。テレビの音量を上げたり、家族が大きな声で話したりして暮らしているらしい。

 同工業会副理事長の木村修造さん(69)は「耳が聞こえないと家族との会話もぎくしゃくして関係が悪くなりやすい。聞こえが悪くなったら、早期に補聴器を着けることが大切です」とアドバイスする。

 ただ、補聴器を着けたからといって、元の聞こえに戻るわけではない。「真正面から滑舌良く、ゆっくり話す。会話をしたいという意欲も大切で、お孫さんに協力してもらうのも良いでしょう」と木村さんは語る。

 補聴器の購入を考えている場合、まず耳鼻科の医師を受診することが大切だ。日本耳鼻咽喉科学会が補聴器相談医を認定し、学会のウェブサイトで公開している。難聴の程度や原因を知り、販売店に伝えて耳あな型や耳かけ型、ポケット型などのそれぞれの人に合ったものを選ぶ。

 購入は公益財団法人「テクノエイド協会」が認める認定補聴器技能者がいる店や、認定補聴器専門店が選ぶ目安になる。

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