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人工関節、良い製品を ひざ、股関節の痛みを解消

(2016年7月12日) 【中日新聞】【朝刊】 この記事を印刷する
画像体の負担が少ない手術法を選ぶ人が少なくないと話す湘南鎌倉人工関節センターの平川和男院長=神奈川県鎌倉市で

 ひざや股関節の痛みやリウマチで悩む人に対する治療として、年間22万人が受けている人工関節手術。体内に埋めて20年以上使用するため、日本人工関節学会は術後の追跡調査に乗り出している。より良い製品を選ぶのが目的で、今年から全国の医療機関の手術情報を集める登録制度の対象施設を拡大し、製品別の優劣を検証していく。 (草間俊介、稲田雅文)

 東京都の会社役員森井博さん(77)は11年前、右の股関節を人工関節に置き換えた。「それまでは腰が痛くて、階段を1段、2段上がるのもつらかった」。手術のおかげで好きなゴルフを再開。半年後にコースに出て、今も週に一度は通う。「ドライバーは200ヤードは飛びますよ」。通院は年に一度、人工関節の状態チェックを受けるだけという。

 日本で使われている人工関節は9割が海外製で、股関節とひざ関節を中心に数100種類にも上る。多くの場合、人工関節の存在を忘れるぐらいに生活が改善されるが、長年使っているうちに、関節部分のこすれ合う樹脂やセラミック部品が摩耗したり、固定部品がゆるんだりして、交換手術が必要になる場合がある。

 選択した製品が最適だったかどうかを判断するには10年以上にわたる追跡調査が必要となる。1970年代から取り組んでいる北欧の先進事例を参考に、学会は2006年に登録制度をつくった。

 医師が患者に人工関節手術を施した際、患者の同意を得て名前や症状、製品名、手術法などを日本人工関節学会が管理するデータベースに入力する。現在、全国約800施設が参加し、約10年で16万件のデータを蓄積。データはネットで公開され一般の人も見られる(学会名で検索)。

 「ある製品の再交換手術が増加していることなどを把握でき、現場の医師が適切な人工関節を選べるようになる」と効果を話すのは、学会で登録制度を担当する岐阜大大学院医学系研究科の秋山治彦教授(52)。試算では現在の股関節の再交換率の7〜8%を4%に半減できれば、年100億円の医療費が節約できるという。

 課題は登録率だ。登録制度に参加する施設が症例数が多い大病院に偏っているため、現状で股関節の30%、ひざ関節の20%しか登録できていない。今年12月までに参加施設を拡大する予定で、股関節で70〜80%、ひざ関節で60〜70%を目指す。秋山教授は「体内で長い間機能する器具なので、本来は登録を義務化して全例を登録することが、悪い製品を排除する意味では望ましい」と訴える。

 人工股関節に置き換える手術で増えているのが、体への負担が小さい最小侵襲(しんしゅう)手術法(MIS)だ。湘南鎌倉人工関節センター(神奈川県鎌倉市)の平川和男院長によると、手術は関節の損傷した部分を取り除いて、チタン合金やセラミック、超高分子量ポリエチレンなどでできた人工関節に置き換える。股関節の場合、従来はももの外側を20〜30センチ切り開き、1カ月以上の入院が必要だった。

 MISには、小さく分解ができ、体の中で組み立てる製品を使う。切開する長さは6〜8センチで済むため、回復が早く入院も短くなる。

 医療費は150万円以上だが、健康保険が適用され、月額の自己負担額を減らせる高額療養費制度を利用できる。例えば、患者が70歳未満で年収500万円(3割負担の人)ならば、実質負担は10万円ほどになる。

 平川院長は「センターでは6泊7日の入院で手術する。患者の平均年齢は62歳。親の介護があり長期入院は難しいので、1週間で済むMISを選びたいという患者が少なくない」と話す。

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