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スマホ活用、糖尿病改善 体のデータ蓄積して分析

(2016年8月30日) 【中日新聞】【朝刊】 この記事を印刷する
画像生活改善を支援するスマホアプリ。測定データを無線で送れる体重計と血圧計、歩数計を利用する=愛知県東浦町のあいち健康プラザで

 糖尿病の患者や予備軍の人たちの生活改善を進めようと「愛知県健康づくり振興事業団」(東浦町)などは、スマートフォンを使って体重や血圧などを管理し運動を促すシステムを開発し、実証実験を始めた。自覚症状なく進行する糖尿病は、患者が生活改善の必要性を痛切に感じないまま悪化し、腎臓や心臓、血管などに重い合併症を患うケースも多い。スマホで体のデータを蓄積して成果に応じたメッセージを表示し、やりがいを感じながら治療を続けられるようにする。(稲田雅文)

 「糖尿病は血液中のブドウ糖の濃度である血糖値が高い状態が続く病気。悪化していくと、さまざまな合併症が出てくる恐れがあります」。7月下旬、同事業団が運営するあいち健康の森健康科学総合センター(あいち健康プラザ)で、20〜40代の男性4人が、保健師の解説に耳を傾けていた。4人は、勤務先の健康診断で指摘を受けた糖尿病の予備軍だ。

 終了後、4人のうち2人には、無線で測定データを送信できる体重計と血圧計、歩数計を渡した。事業団などが開発したスマホアプリを使い、毎日の測定結果を管理する。これから半年、それらのデータをスマホに送って管理する。一方、スタート時と3カ月、6カ月後に血液検査をして、糖尿病の進行具合の目安となるヘモグロビンA1c(HbA1c)などがどれだけ改善するかを調べる。比較のため、残る2人には体重などを紙に書いて管理する従来の指導をした。

 測定機器を受け取った愛知県東海市の男性(25)は、深夜勤務がある工場で働いて7年目。この間、不規則な食事のため体重が数十キロ増えた。会社の健診でHbA1cの悪化を指摘され、1年前にも糖尿病予防の指導を受けたが、体重の記録が続けられなかった。「スマホを利用した管理ならゲーム感覚で続けられるかも」と話す。

 センター長の津下一代さん(58)は「いかに続けてもらうかが糖尿病診療の鍵。しかし、医療機関でこれ以上きめ細かな指導をする余裕はなく、スマホの力を借りることにした」と話す。体重が減るなどの効果が現れれば、多くの場合、HbA1cも改善するという。

 県が県内の106万人を対象にした2011年度の調査では、HbA1cが6.5%以上と糖尿病の疑いがある水準だった7万人のうち、医療機関を受診しなかった人は半数以上の3万4800人。受診している人の中でも32.2%が、生活改善が徹底できず、HbA1cが7.4%以上と比較的高い水準のままだった。

 津下さんは「自覚症状がなく、自分は大丈夫だからと生活を改めない人が多い。しかし、15年ほど放置すると一気に悪化し、腎症が発症して人工透析が必要になることもある」と説明する。人工透析にかかる医療費は、1人当たり年約500万円。14年度末で全国の透析患者は32万人を超え、約1兆5千億円が費やされている。

 実証実験は経済産業省が公募した事業の一環。予備軍100人に加え、名古屋大病院など約20の医療機関の協力で、治療中の糖尿病患者100人も参加する。

 アプリには、七福神のキャラクターが登場。体重などのデータを蓄積し、週1回メッセージを表示する。目標を達成すると「がんばっておるのう」などとほめ、達成できなかった場合などには「心配じゃ」などと活を入れる仕組み。利用者が楽しみながら生活改善を続けられるようにした。

 糖尿病患者を診察する医療機関にとってもメリットがある。診察時に日ごろの体重変化や運動量、血圧などの状況が一目で分かると、より適切な治療方針を立てることが可能になる。

 将来は、一人一人の医療データや生活の違いに応じて、より効果的な指導のあり方を導き出せる可能性もあるという。

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