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ドクターヘリ 出動1.5倍に 広い県内 高まるニーズ

(2016年9月10日) 【中日新聞】【朝刊】【三重】 この記事を印刷する
画像ヘリポートから飛び立つドクターヘリ=桑名市で(三重大病院救命救急センター提供)

 “救急救命医療の切り札”と呼ばれるドクターヘリが、県内に導入されて5年目を迎えた。出動件数は右肩上がりに増え、導入当初の1.5倍に。命をつなぐ活動は県境を越え、本年度から隣接する和歌山、奈良両県と相互の応援態勢が始まった。面積の広い県内で切り札へのニーズは高まっている。(鈴鹿雄大)

 8月上旬に伊賀市の名阪国道で起きた追突事故。「多数の負傷者がいる」と119番通報を受け、市消防本部はドクターヘリに出動を要請した。伊勢赤十字病院(伊勢市)から現場近くのヘリポートまで15分で到着した数人の医師や看護師が、救急車に乗り換えて現場に急いだ。

 窓ガラスは飛び散り、バンパーがへこんだ車体が横倒しになり、燃料が漏れ出していた。医師らは治療と同時に、けが人を病院に搬送。「一刻を争った事故現場。ヘリがあったからこそ助けられた命があった」と医師の1人は振り返った。

 専門医や看護師が乗りこむドクターヘリは消防や現場の救急隊員からの要請を受け出動する。県内では2012年2月に1機が導入された。伊勢赤十字病院と三重大病院(津市)が2カ月ごとに交代で運航している。

 縦に細長い県内は西に山岳地帯、東は海に面していて離島もある複雑な地形で、医師不足も深刻だ。それだけに、遅くとも35分ほどで各地に急行するドクターヘリへの期待は大きい。

 年間通じて初めて運航した12年度に272件だった出動件数は年々増え、昨年度は423件だった。本年度は8月末現在で174件となっている。

 月1回の検証会で病院や消防の関係者が意見交換し改善を進めてきた。津市内の1カ所にしかなかった給油設備を14年に両病院に設置したほか、各消防署が着陸点の確保を進め、4年ほどで200カ所以上増えた。

 本年度始まった奈良、和歌山両県との相互の応援では8月末までに、和歌山県から東紀州地域に3件、県内から奈良県に4件出動している。

 三重大病院救命救急センター長の今井寛さんは「ヘリは救急医療の充実に貢献しており、今後も出動条件や安全面での検討を重ねていく。県や消防、病院がチームとなって、より効果的な運航を図りたい」と話している。

救急車も出動増 14年は8万9000件超 搬送者の55%は軽症

 県内の救急車の出動件数も増え続けている。2014年は8万9277件で、06年と比べて約2万件増えており、搬送者の約55%が軽症の患者だった。県消防・保安課の担当者は「症状に応じて医療機関や相談窓口を利用してほしい」と適切な救急車の利用を呼び掛けている。

グラフ

 同課によると、集計中の昨年は9万件規模になる見込みだ。出動件数が増えたことで現場への到着時間は遅くなり、06年には平均6.8分だったが、14年は8.2分となった。医療機関への収容時間も同様に31.3分が39.2分になった。

 出動増は高齢化が理由とみられ、その傾向は今後も続く。軽症患者の中には病院への移動手段として救急車を使ったとみられる例があったという。

 県内では救急通報の判断に迷った際の電話相談を開説している自治体もある。また、県救急医療情報センター運営のホームページ「医療ネットみえ」では、軽症でもすぐに治療を受けられる医療機関を検索できる。

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