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義足、義手の可能性に光 日下病院 加藤弘明さん

医人伝

(2016年9月27日) 【中日新聞】【朝刊】 この記事を印刷する

日下病院(三重県いなべ市) 整形外科医長 加藤弘明さん(38) 

画像「義足や義手でできることは多い」と語る加藤弘明さん

 「義足で疾走し、遠くまで跳ぶ。オリンピックとは違う迫力があった」。交通事故や病気で手足を切断したり、先天的に手脚の一部がない人に、義足や義手の使い方を指導する。リオ・パラリンピック陸上女子走り幅跳び(大腿(だいたい)部など切断)で4位入賞した前川楓選手(18)=名古屋市中村区=にも、アドバイスを送ってきた。現地に駆け付けて応援し、あらためて義足の可能性を感じた。

 障害者スポーツの選手だけでなく、障害がある多くの人や家族と週1回の「義肢装具外来」で、理学療法士らとともに向き合う。手脚を切断した喪失感に苦しむ人もいれば、子どもが生まれつき手脚がなく、思い詰める親もいる。患者や家族が気持ちを吐き出すと、まずは黙って耳を傾ける。そして、目を見て伝える。「手脚がなくても、幸せになれますよ」。多くの人を診て感じていることだ。

 大津市生まれ。両親ともに医師で、「人の役に立ちたい」と同じ道を志した。高知大卒業後、父の背中を追って整形外科の道へ。31歳のとき、日下(くさか)病院に、義肢装具外来を立ち上げた川村次郎医師と出会った。

 当時は、脚を太ももで切断した場合、歩けるようになる確率は30〜50%で、高齢者は極めて難しいと考えられていた。だが、川村医師が診た患者は、ほぼ全員が歩けるようになっていた。「衝撃だった。義足は奥深いとのめり込んだ」。日下病院に勤務し、外来の診療を手伝った。

 川村医師が大切にしたのは、患者の要望を聞いて、それを実現できるようにサポートすること。太ももを切断した70代の女性は、主治医から一生車いす生活だと宣告されたが、歩きたいと願い川村医師を訪ねた。3カ月の訓練で一本のつえだけで歩けるように。「まさに、その人の人生を変えた。医学の常識にとらわれず、患者を一番に考えることが大事なんだと教わった」

 5年前、川村医師から義肢装具外来を引き継いだ。これまで担当した患者は60人。生後10カ月から80代まで幅広い。パラリンピックで使われる板バネのスポーツ義足や電動の義手など、扱う機器も進歩する。「義足や義手の可能性は無限に広がっている。だから面白いし、やりがいがある」。そう強く感じている。(宿谷紀子)

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