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〈味な提言〉(21) ぼくの知らない味  苦労越え「おいしい」実感

(2016年9月11日) 【中日新聞】【朝刊】【愛知】 この記事を印刷する

管理栄養士・小児アレルギーエデュケーター 名古屋学芸大管理栄養学部助教 楳村春江さん

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 多くの子どもは、ドーナツ、アイスクリーム、チョコレートなどが大好きです。これは、食物アレルギー児にとっては手の届かない憧れの食べ物。どんな味がするのかわからず、ただ周りの友達がおいしそうに食べる姿を見て、うらやましく思っています。そんな牛乳アレルギー児のお話をしましょう。

 壮佑君は、乳児から牛乳除去の生活をしていました。わがままを言うこともなく、素直に母の作ったものを食べてくれていました。

 小学校1年生の夏休み。読書感想文の宿題が出されました。お母さんは壮佑君を図書館へ連れてゆき、絵本を選ばせました。持ってきたのは「むっちゃんのしょくどうしゃ」。食物アレルギー児を題材にした絵本です。お母さんが読み聞かせると、壮佑君は「これにする」と、自宅で感想文を書きました。その一文を紹介しましょう。

 《ぼくは、ぎゅうにゅうがのめません。みんながすきなクッキーやケーキ、チョコレートもたべられません。(中略)となりのおばちゃんがアイスクリームをくれたとき、むっちゃんのこまったきもちがよくわかりました。ぼくのアレルギーのことをしらないひとにシュークリームやアイスクリームをもらったことがありました。ぼくはぜんぜんうれしくなかったです。なんでもたべられるいもうとがうらやましかったです》

 お母さんはこの時、わが子の本心に触れたそうです。壮佑君は、作文の後半でこう書いています。

 《ぼくは、ぜんぜんぎゅうにゅうがのめなかったけれど、いまはびょういんのせんせいにみてもらいながらすこしずつ、のむれんしゅうをしています。ぼくのしらないおいしいあじがいっぱいあるので、はやくみんなとおなじように、ぎゅうにゅうがのめるようになりたいです》

 壮佑君は、牛乳を飲む練習が成功し、念願だったドーナツ、チョコレート、アイスクリームをおいしく食べることができました。今は、最終ゴールの「学校給食をみんなで食べたい!」を目指し、頑張っています。

 このように、幼少期に芽生える好奇心、願望は、喜ばしい正常な心の発育として大切にしたいものです。

 我慢や苦労を乗り越えて獲得したものこそ、何不自由なく食べられる子どもより、心から『おいしい』と感じることができるのではないでしょうか?

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