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〈味な提言〉(23) 生きる力 食のバリアフリー願う

(2016年9月25日) 【中日新聞】【朝刊】【愛知】 この記事を印刷する

管理栄養士・小児アレルギーエデュケーター 名古屋学芸大管理栄養学部助教 楳村春江さん

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 子どもからお年寄りまで、私たちにとって「食べること」はいつも人生の真ん中にあります。生命の維持、空腹を満たすだけではなく、五感を刺激し、家族や仲間と一緒に食べることで心と体を豊かにしてくれます。

 これまで、私は多くのアレルギー児とその家族の食生活に関わってきました。本来、おいしく食べられるはずの食物にアレルギー反応を示す彼らは、常に「食べること」を意識し、その保護者は、安全でおいしく、豊かな食生活を過ごそうと奮闘しています。

 外食、給食などの不便さ、周囲からの偏見を感じながらも、安全な親の手料理を毎日食べて、愛情いっぱいに育った彼らは、自分の困難をものともせず、たくましい姿を私たちに見せてくれます。

 乳児期から重度の牛乳アレルギーだった男児は現在、部活、ゼミ会(飲み会)などをエンジョイする大学生です。スポーツの前後や、アルコールを摂取するときも、彼なりの経験と対応で事故なく安全に過ごしています。彼は、社会人になったら一人暮らしがしたい、母親を安心させてあげたいと語ってくれました。

 ピーナツアレルギーの高校生は、スポーツで海外進出することを夢みて免疫療法に取り組んでいます。将来、同じような境遇にある子どもたちを助けたいと医師、看護師、管理栄養士を目指す学生もいます。

 重度の食物アレルギーを持ちながらも、その現実を寛容に受け入れ、厳しい社会へ果敢に立ち向かおうとする姿に、彼らの「生きる力」を感じます。

 世の中のどんな親でも、共通の願いは「わが子の自立」でしょう。大人になったら自分自身の力でわが身を守るすべを養い、また、逆に困っている人を助けることのできる人になってほしい。愛する人と出会い、親となり、温かい家庭を築いてほしい−。

 そんな願いは、何よりも「食べること」を通して親から子に伝わります。アレルギーの苦労があるだけ、大きな思いが伝わっていることでしょう。

 私たちは、これからも子どもたちの成長と親の願いを大切に、食生活の支援をしてゆきたいと思っています。そして彼らの将来が、安全で便利な食のバリアフリー社会となっていることを強く願います。

 私の「味な提言」は今回で終了いたします。この連載を通して、多くの方々に食物アレルギーの現状をお伝えすることができました。

 これまで、本連載にご協力いただきました患者、保護者の皆さまに深く御礼申し上げます。購読者の方々からも多くのご意見、ご感想をいただきました。誠にありがとうございました。=終わり

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