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抜歯で顎の骨が壊死 骨粗しょう症 BP系薬剤服用

(2016年11月8日) 【中日新聞】【朝刊】 この記事を印刷する
顎骨壊死の発生イメージ

 骨粗しょう症の薬を服用していて、歯科医院で抜歯したら、顎の骨が壊死(えし)してしまった−。長野県の女性(67)から、こんな情報が中日新聞生活部に寄せられた。女性が飲んでいたのは、代表的な治療薬のビスホスホネート(BP)系薬剤。国や関連学会は、服用中に抜歯などの歯科治療を行う際には注意するよう呼びかけている。(宿谷紀子)

 「抜歯した後はずっと痛くて、痛み止めを飲んでも治まらない。まさか骨粗しょう症の薬と関係しているなんて」。顎骨(がっこつ)壊死と診断された女性は驚きを隠さない。

 昔から骨密度が低く、2006年から整形外科でBP系薬剤を処方され、服用し始めた。13年に地元の歯科医院で、弱くなった上の前歯を抜いて差し歯を入れた。治療後、周りの歯茎が腫れ、手で触ると刺すような強い痛みが続いた。

 「歯科医師に何度も痛みを訴えたけれど、ずっと原因が分からなかった」。痛み止めを何度も飲み、自費で差し歯を作り替えても、一向に改善しなかった。14年に別の病気の薬を服用する必要があり、BP系薬剤の服用をやめたが、痛みは続いた。

 たまりかねて、総合病院の口腔(こうくう)外科を受診。コンピューター断層撮影(CT)で骨を診たところ、抜歯した部分と、していない部分の骨の形が違うことが判明。BP系薬剤服用による副作用で顎骨壊死の初期段階と診断された。治療で激しい痛みは治まったものの、壊死した骨は元には戻らず、通院を強いられている。

 女性は、歯科医師だけでなく、BP系薬剤を処方した医師、薬剤師のだれも「歯科治療の危険性について説明をしてくれなかった」と話す。抜歯した歯科医師からは「BP系薬剤服用者に歯科治療を行う危険性は知っていたが、確認不足だった。申し訳なかった」と謝罪されたという。

「患者は薬の使用伝えて」

 BP系薬剤は、古くなった骨を壊す「破骨細胞」の活動を抑え、骨粗しょう症やがんの骨転移などを防ぐのに高い効果がある。

 一方で、服用中の患者が抜歯やインプラント(人工歯根)を入れる手術を受けると、顎の骨の壊死や骨髄炎を起こすことがまれにあるとされる。歯周病など口腔内に感染症があるとリスクが高まることも分かっている。

 愛知県歯科医師会理事で、橋本歯科医院(名古屋市南区)院長の橋本雅範さん(62)は「リスクを下げるため、BP系薬剤を服用している人は、普段から口の中を清潔にするケアをしてほしい」と話す。

 同様の事例は国内で10年ほど前から報告されており、独立行政法人医薬品医療機器総合機構によると、14年度には332件、15年度には183件(いずれも疑われる例を含む)が発生している。

 歯科医師会や医師会、関連学会、製薬会社などは以前から、会報やウェブサイトでBP系薬剤で顎骨壊死を起こす危険性を訴えてきたが、生かされなかった。

 このため橋本さんは「もしBP系薬剤を飲んでいて歯科にかかる場合は、そのことを必ず伝えてほしい」と患者に呼び掛ける。

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