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心不全招く 大動脈弁狭窄症 高齢化で患者数増加

(2016年11月15日) 【中日新聞】【朝刊】 この記事を印刷する
画像渡辺弘之さん

 血液の逆流を防ぐ心臓弁の働きが悪くなる大動脈弁狭窄(きょうさく)症の患者が増えている。高齢化に伴うもので、症状が進むと心不全や突然死につながる。専門家は「早期発見のため定期的に診察を受けて」と話す。(寺本康弘)

 「症状はゆっくり進行する。自覚症状がないからといって、大丈夫だとは思わないで」。東京ベイ・浦安市川医療センターハートセンター長の渡辺弘之さん(56)は強調する。

 心臓の中には4つの弁があり、このうち大動脈の入り口にあるのが大動脈弁。高齢になるのに伴って新陳代謝が落ちると、老廃物がたまって硬く石灰化し、十分開かなくなる病気。正常に開くと3〜4平方センチ程度だが、症状が進行すると3分の1から4分の1に狭まる。血液が流れにくくなるなどして、収縮と拡張を繰り返す心臓の動きが悪くなり、心不全につながる。

 罹患(りかん)率は、米国の調査では45〜54歳が0・2%なのに対し、75歳以上になると4・6%にも跳ね上がる。高齢化の進展で、国内患者数は推定で100万人に上る。

 動悸(どうき)や息切れ、胸の痛みが典型的な症状。だが、「少しずつ進行するため見逃してしまい、心不全になると予後は悪くなる」と渡辺さん。普段から活発に動いている人は変化に気付きやすいが、家の中に閉じこもりがちな人は気付きにくい。

 初期から心音に異常が出るので、聴診器による診察で分かる場合が多い。心臓超音波(心エコー)検査を受けると、正確な診断が可能だ。定期的に検査を受けながら医療者と治療法を相談し、心臓の収縮を助ける薬や血圧を下げる薬などの服用を続ける。

 すでに症状が進んでいる場合、根本的な治療は、弁を人工弁に取り換える手術になる。人工弁の素材はウシやブタの組織を使った生体弁とチタンやカーボンなどでできた機械弁がある。国内では年間1万3千人が手術を受けている。

 渡辺さんは「早めに分かって適切な治療を受ければ怖くない病気。1年に1度は検査を受けてほしい」と話している。

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 心臓の弁がうまく働かなくなる病気はこのほか、肺から心臓に来る血管の入り口にある僧帽弁が閉まらなくなる僧帽弁逆流もあり、大動脈弁狭窄症と同様に高齢者に多い。

俳優の杉良太郎さん 昨年末「弁」の取り換え手術

画像大動脈弁狭窄症で手術を受けた経験を振り返る杉良太郎さん=東京都内で

 俳優の杉良太郎さん(72)は昨年末、大動脈弁狭窄症で、弁の取り換え手術を受けた。

 10年以上前から目まいや息切れなどの初期症状があったが、「大丈夫だろうと思い込んでいた」。病気と知ったのは昨年夏。テレビ番組の撮影で訪れていた和歌山県内のホテルで突然具合が悪くなった。「これまでに経験したことのないような息苦しさを感じた」と話す。

 高熱も出て、翌日帰京して診察を受けると、「大動脈弁狭窄症が原因となった心不全による肺炎」と診断された。弁の開きは1平方センチ程度と、かなり症状が進行していた。医師からは「病院に来るのがもっと遅ければ手遅れだった」と言われた。

 手術後11カ月がたったが、今も3種類の薬を飲んでいる。手術前より体調は良いといい、塩分を控えた食事を取るなど、体調を気遣う生活を送っている。

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