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骨髄移植 ドナー動けず 適合しても「仕事」「健康の問題」

(2016年11月15日) 【中日新聞】【朝刊】 この記事を印刷する
画像骨髄提供のドナー手帳を示す対馬あさみさん=三重県桑名市で

 白血病を公表して闘病していた名古屋市議の日比健太郎さん(35)=民進=が、3日に亡くなった。日本骨髄バンクで、白血球の型(HLA)の適合する人が4人見つかりながら、移植は受けられなかった。同バンクが設立されて25年。登録ドナー(提供者)は46万5千余人に達したが、適合しても仕事や健康上の理由などで骨髄採取に至らないことも多い。休業補償などの支援が求められるほか、健康上の問題が少ない若い世代の協力を増やす方策も必要だ。(編集委員・安藤明夫)

 三重県桑名市の介護士、対馬あさみさん(47)は昨年、骨髄を提供した。骨髄採取の手術は、想像していたよりずっと簡単で、後の痛みもなかった。しかし、「それまでが大変でした」と、振り返る。

 日本骨髄バンクから適合の連絡を受け、職場の上司に相談すると「何かあったらどうする」と強く反対された。全身麻酔の手術と聞いて、3人の子を育てる対馬さんの体を案じての制止だった。しかし、同バンクの過去約2万件の骨髄採取手術で、死亡事故はゼロ。「まず大丈夫と思っていたので、資料を見せて説明し、納得してもらいました」

 続いて勤務のやりくり。手術までに、意思確認や健診などで名古屋市内の病院に5回通った。手術は4日間の入院。同僚にしわ寄せが行くことが心苦しかった。有給休暇も7日間使った。交通費や入院・検査などの費用は同バンクの負担だが「非正規雇用の立場だったら、収入に響いて絶対に無理」と思った。

 さまざまな負担があっても、決意が揺るがなかったのは、母親としての信念があったからだ。「もしわが子が重病で、他の人の力が必要だったら、私は必死になって支援を求めると思う。自分が役に立つことがあるならやらなきゃと思って」

 ドナー登録して15年間で、適合の連絡は今回で3回目。初回は、患者側の事情で打ち切られた。2回目は、対馬さんが妊娠中で不可能だった。「今度はどうしてもやりたかった」

 患者についての説明はなく同バンクを通じての手紙のやりとりもないが「自分が健康でいて、務めを果たせたことにほっとしました」という。社会貢献への思いが強まり、今年から桑名市内で月1回、こども食堂を開いている。

 社会に望むことは休業補償の充実。一部の自治体では休業費用や奨励金を支給する制度が設けられており「全国に広がってほしい。経済的なハードルが下がれば、若い人たちももっと積極的になれる」と期待する。また、ドナー登録者の心構えとして「周りの人たちを心配させないためにも、日ごろから白血病や骨髄移植のことを話して、理解を広げることが大事だと感じました」と話す。

 同バンクによると、昨年1年間で骨髄移植を求める患者の95.9%にHLAが適合する登録ドナーが見つかった。しかし、実際に移植できたのは移植が必要な患者の54.6%にとどまる。患者の病状で中断する例もあるが、ドナー側の理由で打ち切られることが多い。その内訳は、健康上の理由が34%で、病気の治療中、高血圧、貧血、妊娠などが多い。残る66%は、都合がつかない、連絡が取れない、家族の同意がない−などだ。

 ドナーになれるのは、18歳から54歳までだが、ドナーの新規登録は減少傾向。特に若者の登録が少なく、ドナーの年齢層は40代前半がピークだ。生活習慣病などで骨髄提供ができない例も増えている。

 同バンクでは、若者層への働き掛けが急務とみて、大学で登録会を開いたり、献血会場で登録を呼び掛ける活動に力を入れている。

登録率低い中部

 ドナー支援とともに重要なのは、新規登録を増やすことだ。中部地方の登録は、低迷傾向が続いている=表。対象人口(18〜54歳)1000人あたりの登録者の割合は、全国16位の石川が全国平均を超えているだけで、愛知39位、静岡40位、岐阜43位、長野47位と、下位に集中している。20代の若年層の比率も、中部9県すべてが平均以下で、9県のうち5県が40位台だ。

表

 ドナー拡大を目指して、岐阜県では本年度から、ドナーの休業費用などの助成制度を持つ市町村に補助金を支給する仕組みを設けた。「岐阜市、大垣市など4市2町で制度があり、さらに増えそう」と担当者。こうした都道府県単位の補助は、東京都と7県であり、日本骨髄バンクは「市町村への波及効果が大きい。さらに広がってほしい」と話す。

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