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柔道事故 中学・高校で再び増加

(2016年11月25日) 【中日新聞】【朝刊】【その他】 この記事を印刷する

初心者の大外刈り 注意

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 一時期減っていた中学・高校での柔道事故が、再び増え始めた。2015~16年に起きた部活動での重大事故は死亡3件、重傷4件。このうち、大外刈りの技をかけられて頭を打った生徒が3人おり、専門家は初心者の指導の際には、大外刈りの受け身の練習を徹底させるよう警鐘を鳴らす。(細川暁子)

 栃木県大田原市の中学1年生の男子生徒(13)は今年8月、柔道部の練習中に3年男子(15)に大外刈りをかけられ、床に背中と頭を打ち付けて一時意識不明の重体になった。生徒は救急搬送され、約10日後に意識を回復。首から下の右半身がまひして病院でリハビリを続け、2カ月後の先月下旬にようやく退院して通学できるようになった。

 市教委によると、部員は32人おり、男子生徒は柔道を4月に始めたばかりだった。事故当時は柔道三段の男性顧問(30)と柔道二段の男性副顧問(46)が指導。得意技が同じ生徒同士でペアを組ませていた。

 事故後、学校側は謝罪したが、市教委は「男子生徒は受け身の練習を十分に行っており、安全対策に問題はなかった」としている。

 しかし母親(48)は「息子は大外刈りは得意ではなく、技を受けるだけの受け身の技能がついていなかったと思う。以前から私に『練習が怖い。ついていけない』と訴えていた」と強調する。市教委は今後、第三者委員会を立ち上げて事故の検証をする予定だ。

 全日本柔道連盟によると、2003〜14年に柔道の授業や部活動で起きた頭部外傷事故は41件。技が判明している29件のうち、大外刈りが原因だったのは15件。他は背負い投げ3件、大内刈り3件などで、大外刈りの事故は突出して多い。

 大外刈りは、組んだ体勢から、技をかける側が脚を相手の両脚の後ろに回して倒す技だ=イラスト参照。技をかけられる側は、両脚が宙に浮く形になるため、頭や背中を打たないようにしっかりと受け身を取る必要がある。

野瀬清喜・埼玉大教授野瀬清喜・埼玉大教授

 「初心者がいきなり立位(立った姿勢)から、大外刈りの投げ込みを受けている練習が多く行われているのが、事故が起きている要因ではないか」

 1984年のロス五輪銅メダリストで、全柔連の重大事故総合対策委員長を務める野瀬清喜・埼玉大教授は分析する。初心者は、片ひざをついた姿勢での受け身練習を十分に行ってから、立ったまま投げられる練習に段階的に移行することが重要という。

 柔道の授業中や部活動の練習中に死亡したり、重傷を負ったりする事故は、かつて多発していた。事故被害者や家族からの批判が高まり、文部科学省は2012年に教員向けの柔道指導の手引を策定。授業では、体格や技能差のある子ども同士で組ませないことや、指導教員に対する安全教室などを実施。12〜14年度は、授業や部活での死亡事故ゼロが続いていた。

 再び事故が増えたことを重くみた全柔連は11月上旬、各都道府県連盟に事故防止の啓発活動を促す文書を送付。指導者を対象にした講習会で「初心者には立位からの大外刈りの投げ込みを受けさせない」などの注意喚起を行うよう呼び掛けた。

◇2015年以降の重大事故(全柔連と全国柔道事故被害者の会による)

【死亡】

15年5月 福岡市の中1女子。大外刈りをかけられ頭部外傷

15年8月 横浜市の高1男子。ダッシュの練習中に熱中症

16年4月 仙台市の高3男子。試合中に相手と倒れ込み頸椎(けいつい)損傷

【重傷】

15年5月 大分県中津市の高1男子。大内刈りを返され頭部外傷で一時意識不明に

15年12月 兵庫県の中2男子。相手と組んでいる最中にうつぶせに倒れ込み頸椎脱臼・骨折

16年5月 群馬県館林市の中3男子。体重差約70キロの相手に大外刈りをかけられ頭部外傷で一時意識不明に

16年8月 栃木県大田原市の中1男子。大外刈りをかけられ頭部外傷で一時意識不明に

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