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がんの知識 正しく知って 小中高校で授業

(2016年11月28日) 【中日新聞】【朝刊】【その他】 この記事を印刷する

医師や患者の体験聞く

画像がんの経験を話す荒木求州さん=三重県亀山市の亀山中学校で

 がんに対する正しい知識を学ぶ「がん教育」が、各地の学校で始まっている。検診への理解が進むことや、がん患者やがん治療に偏見を持たないようにすることなどが期待されている。(佐橋大)

 三重県亀山市の亀山中学校では10月、保健体育の一環で3年生が、がんを学んだ。大腸がんの手術もする外科医で、三重大大学院医学系研究科講師の井上靖浩さんが、がんで亡くなる人が年々増えていることや、喫煙などの生活習慣によってがんになる可能性が高まることを伝えた。「ならないようにと思っていても、なってしまうのががん。早期発見が大事。早く見つければ、治る確率も高まる」と、検診の必要性を訴えた。

 続いて、上咽頭がん経験者で法務省津保護観察所社会復帰調整官の荒木求州(もとくに)さん(39)が「20歳でがんになった。そのとき、親に言えなかった。知識がなく、がんになったら死ぬと思っていたから」と語った。「がんに関して自分の思いを言葉にするのには勇気が要る。皆さんは話しやすい雰囲気をつくって」と呼び掛けた。生徒たちは「いい生活習慣を心掛けたい」などと感想を述べていた。

 長野県佐久市の佐久平総合技術高校でも、1年生に授業があった。内容は、がんの現状や予防について。池田みすゞ養護教諭が、身近な人にがん検診を勧めるとしたら、どうするかと生徒たちに課題を与えた。生徒たちは、父親や祖母らを想定し、考えた。

 厚生労働省によると、がんは1981年から死因の第1位。生涯で2人に1人がかかり、昨年は37万131人が亡くなっている。一方、がん検診の受診率は欧米諸国に比べ低い。

 がん教育の推進は、国が2012年度に定めた「がん対策推進基本計画」に盛り込まれている。現在、小学校高学年、中学3年、高校の保健で、生活習慣病の一つとしてがんを扱っているが、同計画は「理解を深めるには不十分」と指摘した。文部科学省は、学校でのがん教育を17年度以降、全国で実施する目標を立て、それに先立ち、14年度からモデル事業を開始。16年度は24道府県の137の小中学校・高校で実施し、講師料などを負担して、授業の内容や効果を研究している。

 同省健康教育・食育課の鶴原寛之係長は「検診受診率の向上や、がんになりやすい生活習慣の改善、患者への誤ったイメージの払拭(ふっしょく)につながれば」と話す。

 三重、長野両県の授業は、いずれもモデル事業だ。三重県では昨年6校で実施。授業の前後で、がん検診を受診年齢になったら受けようと考える児童・生徒の割合が64%から85%に上昇。「がんになっている人も過ごしやすい世の中にしたい」と考える割合も62%から87%に上がった。

 長野県の授業は、文科省が今年4月に作った補助教材を使った。内容が専門的になりすぎず、科学的な根拠を持った標準的な中身になるよう工夫されている。モデル校の一部で使ってもらいながら改善する。

新・指導要領で拡充方向 講師確保 普及の鍵

画像がんの予防について話す池田みすゞ養護教諭=長野県佐久市の佐久平総合技術高校で

 学校は現在、がん教育を義務づけられてはいない。今の学習指導要領では、生活習慣病の学習の一環などで、がんも扱えるという位置付けだ。

 2020年度以降実施予定の新学習指導要領について、中央教育審議会は8月、高校の保健で「疾病構造の変化による現代的な健康課題の解決」や、検診での予防について授業内容の充実を図るとまとめた。がん教育も拡充の方向で検討しているとみられる。

 文部科学省健康教育・食育課は、来年度以降、全国でがん教育を行うことを目指しているが、普及できるかは不透明だ。

 課題は講師の確保。モデル事業では、多くの県で外部講師を招き授業をしてもらっているが、「より多くの学校で取り組むためには、より講師が必要になる」(長野県教育委員会)。

 文科省は、健康や命の大切さを伝える上で、がん経験者や専門医が外部講師として果たす役割に期待する。長野県教委は、がん教育の講師への協力を呼びかけるちらしを作成。協力してくれる人をデータベース化して、学校が利用しやすい体制をつくりたいという。

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