つなごう医療 中日メディカルサイト

「患者によいこと」第一に 福井大病院 林寛之さん

医人伝

(2016年12月6日) 【中日新聞】【朝刊】 この記事を印刷する

福井大病院(福井県永平寺町) 総合診療部教授 林寛之さん 

画像研修医向けの講習ビデオを撮影するなど、若手の育成にも力を注ぐ林寛之さん

 最先端の機器で、さまざまな検査を受けても病気が分からない。そんな人に普段の暮らしぶりを尋ねると、隠れている病気と治療法が浮かび上がってくる。診療科にこだわらず幅広く診る総合診療医で、患者の「生活史」をヒントに診療し、テレビでもおなじみだ。

 1986年に自治医科大を卒業。地元の福井に戻り、小さな病院に勤務した後、救急医療もできる外科医を目指し91年にカナダへ留学。けがの治療を学ぶつもりが、留学先の病院は内科系の救急搬送が圧倒的に多く、それが転機になった。

 ER(救急室)の現場では、素早い診断が不可欠。その力を付けようと、1カ月に40もの論文を読み込む同僚に衝撃を受け「基本をきちんと押さえないと」と、猛勉強を始めた。

 発熱した患者も、風邪と決めつけず症状から答えを考える。日本では熱があると簡単に抗生剤を出しがちだが、それでは体内の良い細菌も殺してしまう。患者の利益優先の考え方をたたき込まれた。自身も若手に「アリを殺すのにバズーカを使うのか?」と問うようになった。

 帰国後は希望とは違う成人病センターで健康診断を担当したり、田舎町の診療所に勤務したりした。この経験も「生活史から治療法がみえる」という考えの原点になった。

 ある日、両手の指先のしびれを訴えて男性が受診した。大きな病院で検査を受けたが原因不明と言われたという。「何かした?」と聞いても「何もしていない」。「畑は?」と水を向けると「してるよ。おとといはダイコンを200本抜いた」と語りだした。病気ではないと判断し、数日はダイコンを抜かないように伝えると、すぐに治った。

 日本で総合診療やER医が注目され始めたのは、2000年代。「大学が臓器専門医ばかり育てようとしてきた。救急も各分野の専門医が集まって、自分の専門外は受け付けないこともあった」

 その傾向は今もあると感じる。だから、若手にはさまざまな分野に興味を持ち、診断学への関心を高めてくれるよう期待する。研修医の勉強会ではカニのかぶり物をかぶったりして「3分に1回笑いを取る」。まずは、研修会を親しみやすくするためだ。若手には「初期研修は自分のためじゃなく、患者のため」と伝えている。「患者によいことをする医者に」との願いを込めて。(中崎裕)

同じ連載記事
心エコーで最善策提案 四日市内科ハートクリニック 三原裕嗣さん (2017年10月3日)
ヘリ救命医療の質追求 富山県立中央病院 松井恒太郎さん (2017年9月26日)
症状ひもとき原因究明 藤田保健衛生大総合アレルギーセンター 矢上晶子さん (2017年9月12日)
「幸せなお産」を手助け 明生助産所 鹿野恵美さん (2017年8月29日)
医師と育児 両立に尽力 公立陶生病院 加藤英子さん (2017年8月22日)
同じジャンルの最新ニュース
肝炎の最新治療法紹介 野洲で22日 助成制度も解説 (2017年10月20日)
「18歳で成人」法改正しても 酒・たばこ 20歳から (2017年8月31日)
受動喫煙 線引き先送り (2017年8月14日)
高脂血症の新薬承認 副作用少なく、腎・肝臓患者に投与目指す (2017年7月19日)
〈心と体 すっきりナビ〉 食生活偏りで亜鉛欠乏症 (2017年6月27日)

中日新聞広告局 病医院・薬局の求人