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内部障害の子も配慮を 障害者差別解消法

(2016年12月19日) 【中日新聞】【朝刊】【その他】 この記事を印刷する
画像学校と保護者の協力の仕方などを話し合った「全国心臓病の子どもを守る会」全国大会の分科会=東京都新宿区で

心臓病など 学校の対応に遅れ

 心臓や腎臓、消化器などに重い病気がありながら、地域の学校に通う子どもたちが増えている。こうした内部障害のある子どもについて、今年4月に施行した障害者差別解消法は学校側が適切な配慮をするよう定めている。だが、生活上の困難さが見えにくく、学校や教育委員会の理解が十分でないために、悩む保護者もいる。(佐橋大)

 愛知県に住む小学3年の女児(9つ)は、肺高血圧症のため、液体酸素の入った最大1.6キロある装置を常に持ち歩いている。この病気は肺の血管が細くなるために、肺に血液がうまく回らなくなる。不足しがちな酸素を補うため、装置が欠かせない。休み時間に教室の移動で階段を上り下りするときは、体の異変に備えて、教員が付き添う。

画像肺高血圧症のため女児が常に持ち運んでいる液体酸素装置(手前)=愛知県内で

 ただ、付き添いがないこともある。歩いて目的地に向かう校外学習は、他の子のように歩けず、母親が送り迎えをしなければならない。女児の母親は、学校の対応に「少ない人数で良くしてくれている」と、感謝しつつ、「体調にも波がある。本人の状況に応じて、娘が安心できる移動介助などをしてほしい」と願う。

 同じ学年には、生まれつきの重い心臓病で0〜3歳に4回、心臓の手術を受けた男児もいる。肺での酸素の取り込みが悪く、疲れやすい。薬の影響で血が止まりにくく、転ぶと大事故につながる。男児は体が小さく、他の児童にぶつかるだけでも、飛ばされてしまうことがある。2人の母親は、自治体の教育委員会に何度も足を運び、内部障害の子のために介助員を配置している自治体の例なども示し、教職員らの増員などを求めたが、増員は困難との回答。教委は「市の費用で各校に一人以上、支援する職員を配置しており、今の予算では増やせない」とする。だが、職員は全校の出来事に対応する。十分に目が行き届かないのではないかと母親らは心配する。

 心臓病の親らでつくる「全国心臓病の子どもを守る会」によると、「階段の上り下りが困難」などと訴えても、適切な措置を取ってもらえないケースがまだ多い。事故などを恐れたり、支援する人を配置する負担を避けたりするあまり、病名だけで、通常学級の進学が困難だと考えられたり、保護者に常に付き添いを求めるなど、差別的な扱いをされることもあるという。

 会が10月に東京都内で開いた全国大会で、分科会のテーマに初めて「心臓病児にやさしい教育」を設定したところ、特別支援学級の対応にも批判があった。

 京都府の男性が、現在中学1年で、腸に潰瘍ができる病気と心臓病を併発している生徒の小学校時代の事例を報告。入院期間が長く、小学校は半分近く欠席した。授業に追いつくため特別支援学級に入ったが、知的障害児向けの授業で、補習もなかった。

 文部科学省の特別支援教育課調査官も務めた関西学院大の丹羽登教授は、「病弱児として知的障害児とは別の授業内容を検討すべきだ」と指摘した。

「対象者の範囲」を誤解

 内部障害の子どもへの対応が進まないのは、「学校側の誤解も要因」と関西学院大の丹羽登教授は指摘する。

 障害者差別解消法では、学校は、障害のある児童に、過度な負担でない範囲で、スロープの設置や必要な職員を配置するなどの配慮を義務付けている。ところが、配慮の対象になる身体障害に、心臓病などの内部障害が含まれることは社会に広く知られていないという。学校関係者でも、配慮が求められる対象は、知的障害と肢体不自由、発達障害を思い浮かべ、内部障害は抜け落ちやすいという。

 医療の発達で、以前は救えなかった命が救えるようになり、重い病気があっても学校に通う子どもは増えた。文部科学省によると「病弱・身体虚弱」を理由に特別支援学級に在籍する児童生徒は、2002年に1693人、13年で2570人。通常学級に通う子どももいる。必要に応じた支援員の配置や教育内容の保障を含め、感染症の予防や疲れやすさへの対処など、学校や教育委員会には実態に即した対応が課題だ。

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