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犬と触れ合い不安軽減 子ども病院で治療の支えに

(2017年1月24日) 【中日新聞】【朝刊】 この記事を印刷する
画像ベイリーと触れ合って喜ぶ高橋きいなちゃん(中)=横浜市南区の神奈川県立こども医療センターで

 長期入院中の子どもを元気づけるファシリティドッグが、国内の子ども病院2カ所で活躍している。子どもたちのストレスを和らげ、つらい治療を乗り越えるための支えになっている。(稲田雅文)

 横浜市南区にある神奈川県立こども医療センター。昨年12月、4階の病室で、入院中の高橋きいなちゃん(4つ)がゴールデンレトリバーの「ベイリー」(オス、9歳)と触れあった。

 体が思うように動かせないきいなちゃんだが、ベイリーの横で寝そべると、盛んに寝返りを打ってはじけるような笑顔を浮かべた。「上手、上手。触れたね!」。母のひろみさん(34)がうれしそうに声をかける。

 ベイリーは涼しげな顔で寝転んだまま。きいなちゃんのにおいを嗅ごうとしたり、急に動き回ったりすることはない。隣では、ベイリーに指図するハンドラー(調教師)役で、看護師資格を持つ森田優子さん(35)が付き添って見守る。

 生まれてすぐに心臓の手術を受けたきいなちゃんは、同院への入退院を繰り返してきた。ベイリーとは生後4カ月のころからの付き合い。ひろみさんは「2カ月前に入院したときは病状が良くなくて、寝たきりの状態だった。でもベイリーと一緒にいると、意欲がわくようで、何とか自分で動こうとしていた」と話す。

 ベイリーの役割はさまざまだ。注射を嫌がる子どもの横に付き添ったり、歩行訓練を一緒にしたりするほか、手術室まで同行することもある。一緒に過ごすことで、子どもの不安やストレスを和らげているほか、診察や治療をスムーズに進められる効果もあるという。森田さんと院内を歩くと「ベイリー!」と子どもが駆け寄ってくる人気者だ。

 病院に常駐しているため、約400人いる入院患者の必要に応じてすぐに動くことができるのが強みだ。医療機器が発する音や、子どもの泣き声にも慣れるように訓練されている。

 吉岡幸(さち)看護局長は「病院は子どもにとって非日常の世界ですが、ベイリーとすごす間は笑顔になり、日常を取り戻すことができる。親も子どもの笑顔を見て元気づけられる。頑張る力を引き出してくれるんです」と話す。

米国では数百頭が活動

 ファシリティドッグは「施設(ファシリティ)にいる犬」を意味する英語。森田さんによると、米国では病院のほか、学校や裁判所などで数100頭が活動しているという。

 国内では2010年、森田さんが所属するNPO法人シャイン・オン・キッズ(東京都)が、ハワイで訓練を受けたベイリーを静岡県立こども病院(静岡市)に派遣したのが初めて。現在は、同病院と神奈川県立こども医療センターで2頭が活動している。

 犬を病院に入れる際に心配になるのは衛生問題だ。センターでは、病棟に入る前に体をふくなどの管理を徹底することで、感染事故は起こっていない。一般病棟や集中治療室(ICU)への立ち入りは許されており、化学療法のためのクリーン病棟など一部のみが入れない。ただ、導入する病院は増えていない。人件費も含めて年間900万円の費用が壁となっているためだ。センターでは寄付を募っているが、寄付だけではまかなえないため、一部を施設側が負担している。

 森田さんは最近、ファシリティドッグの効果についての調査研究に着手した。「医療的に効果があると数字で示すことができれば広がっていくはず」と力を込める。

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