つなごう医療 中日メディカルサイト

コーディネーター 専門性高め底上げ

(2017年2月7日) 【中日新聞】【朝刊】 この記事を印刷する

藤田保健衛生大が育成コース

図

 藤田保健衛生大(愛知県豊明市)は2016年春から、大学院保健学研究科に臓器移植コーディネーターを育成する社会人向けコースを全国に先駆けて設置している。「いのちの橋渡し役」としてコーディネーターは欠かせないが、医学的な知識や倫理問題、関連法などを学ぶ機会が乏しいまま、その役割を担っている人もいるためだ。専門的な知識を身に付ける場を提供し、全体の底上げをすることで、伸び悩む移植件数の増加を目指す。(稲田雅文)

 1月中旬の月曜日夜、同大の講義室で20~50代の看護師と臨床検査技師計8人が、同科の朝居朋子准教授の話に耳を傾けていた。8人は初年度の院生だ。

 脳死移植に伴う医療費についての講義が終わると演習に。朝居准教授は「脳死になった患者の家族が臓器提供の希望を伝えてきたとき『提供する代わりに治療費や葬儀代を補助してほしい』と申し出たら、それができないことをどう説明しますか」と投げかけ、2グループに分かれて議論をした。

 コーディネーターは「日本臓器移植ネットワーク」所属の人が一般に知られるが、臓器提供をする側、受ける側双方の医療機関にもコーディネーターを配置しているところが多い。ただ、法的な資格制度はなく、提供側のコーディネーターは県などが研修をして認定する一方、受ける側は日本移植学会を中心とする認定制度に基づき活動するなど、立場はさまざま。院生8人のうち5人は、同大病院で看護師などとして働きながらコーディネーターも務めている。

 臓器移植は、事故などで突発的に提供者(ドナー)が現れ、数多くの人がかかわるチーム医療。病院のコーディネーターは、主治医に代わって家族に臓器提供について説明し、提供の意思がある場合は「日本臓器移植ネットワーク」に連絡する。手術室の手配など、院内の調整もする。

 提供を受ける側のコーディネーターは、日ごろから腎移植などを待つ患者の相談に乗るなどのケアを担当。順番が回ってくれば、患者への説明や院内の連絡調整役を務める。

 ネットワークのコーディネーターを務めた経歴がある朝居准教授は「移植医療を支える鍵なのに、定期的な研修があるぐらいで統一的な教育プログラムはない。肩書を持っているだけの人もおり玉石混交。大学院で人材の底上げを図りたい」と狙いを話す。

 大学院では医学や法律の知識のほか、身内の死に直面した家族と面談する方法などを2年間で学ぶ。実際の提供の場面や移植手術に立ち合う実習もあり、学位論文の審査合格者には看護学修士を授与する。

 院生の一人で、5年前から同病院で提供を受ける側のコーディネーターを務める看護師の林未佳子さん(39)は「授業やドナー側のコーディネーターとの交流を通じ、家族がどういう思いで提供に踏み切ったのかを知り、命をつなぐ医療だとより深く理解できた。コーディネーター同士の横のつながりができたことも向上心に結び付いた」と話す。

 移植に積極的な病院でない限り、医療関係者でもコーディネーターへの理解が進んでいないのが現状という。朝居准教授は「専門性が高い人材を育成し、コーディネーターの知名度を上げ、役割の重要性を知ってもらいたい」と意気込む。

ネットワークを核に連携

 臓器を提供する側と受ける側を取り持つのが日本臓器移植ネットワークで、全国に現在32人のコーディネーターがいる。

 「提供したいという人がいる」と連絡があると、東京、札幌、名古屋、大阪、福岡からコーディネーターが駆け付ける。到着すると、提供側のコーディネーターと情報を共有し、協力して家族への説明と意思確認をする。臓器を運ぶルートを決めるのも、ネットワークのコーディネーターの役割だ。

 提供を受ける人の公平な選定と、受けた人に提供者が分からないようにすることも重要な役割だ。

 都道府県に所属するコーディネーターも全国に計55人いる。ネットワークと連携して連絡や調整をしている。

中日新聞広告局 病医院・薬局の求人