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乳がん・卵巣がんリスクを低額で検査

(2017年2月12日) 【中日新聞】【朝刊】【その他】 この記事を印刷する
低コストの遺伝子検査

 乳がんや卵巣がん発症の可能性が高まるとされる遺伝子の異常を低コストで調べることができる新たな検査法を、国立遺伝学研究所(静岡県三島市)の井ノ上逸朗教授(人類遺伝学)らが開発し、国内の特許を出願したことが11日、同研究所への取材で分かった。

 新たな手法は、一度に大人数を調べるため一人当たりのコストを下げることができ、現在一人約20万〜30万円の検査費用を2万円程度まで抑えられる。

 井ノ上教授は「家族や親族に乳がんや卵巣がんを発症した人がいる場合は、遺伝子検査で早期発見につながる。費用が安ければ多くの人が検査を受けられる」と話しており、2年をめどに実用化し、保険適用も目指す。

 ただ遺伝子に異常が見つかっても、発症のリスクは人によって異なるため、専門家による丁寧な検査結果の説明が必要となる。

 検査で調べるのはBRCA1、BRCA2という遺伝子。本来はがんを抑制する働きをするが、異常があると十分に機能せず、遺伝性の乳がんや卵巣がんを発症するリスクが高まるとされる。2遺伝子の異常を調べる検査は現在、米国の検査会社が医療機関を通じて提供しているが、一人約20万〜30万円と費用が高いことから、検査を受ける女性は限られていた。

 新手法は、検査を受ける人の血液からDNAを採取し、特殊な処理で一人一人のDNAに「目印」を付ける。96人分を一つの容器にまとめ、遺伝子の配列を高速で調べることができる「次世代シーケンサー」という装置にかけ、同時に解析。目印をもとに一人一人の異常を調べる仕組み。

 井ノ上教授らは千葉大の協力を得て、乳がん患者11人を含む女性約400人を新手法で調べ、遺伝子の異常を高い精度で検出できることを確かめた。

発症には個人差 予防、早期発見に有効

 国立遺伝学研究所の井ノ上教授らが開発した乳がん、卵巣がんの新たな遺伝子検査は、低コストのため、検査を受ける人が飛躍的に増え、予防や早期発見につながる可能性がある。一方で、遺伝カウンセラーなどの専門家や医師が検査結果を慎重に解釈し、丁寧に説明する仕組みづくりが求められる。

 国立がん研究センターの統計によると、国内で乳がんと診断される女性は毎年約7万人と部位別で最も多く、増加傾向にある。

 乳がんのうち遺伝性は約5〜10%。海外のデータではBRCA1、BRCA2の遺伝子に異常がある場合、乳がんになるリスクは一般の女性に比べて6〜12倍、卵巣がんは8〜60倍も高まる。遺伝子に異常が見つかった米女優アンジェリーナ・ジョリーさんが乳房の予防切除と再建手術を2013年に公表した。

 乳がんや卵巣がんの患者が家族にいれば、いつか自分も発症するのではないかと不安を抱く。

 井ノ上教授らが新手法開発を進めた背景には、安い費用で遺伝子検査を普及させ、結果を本人や医師が把握することで、遺伝性の乳・卵巣がんの発症予防や早期発見につなげたいとの思いがある。

 ただ、2遺伝子の異常があっても、発症するリスクは人によって異なる。また、リスクがどれだけ高まるか明らかになっているのは主に欧米人のデータで、日本人のデータはまだ少ないという課題もある。

 井ノ上教授は「多くの人が検査を受けてデータが集まれば、リスクを判断するのに役立つ」と話している。

 BRCA1とBRCA2 がん細胞の働きを抑えるタンパク質を作る2種類の遺伝子。このタンパク質は、細胞内で傷ついたDNAを修復し、細胞分裂が急速に進まないようにする働きがある。遺伝子に変異があり、正常なタンパク質が作られないと、乳がんや卵巣がんにかかりやすくなる。一般的に両親のどちらかが変異のある遺伝子を持っていた場合、50%の確率で子どもに受け継がれる。

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