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転倒予防 多角的に対策 国立病院機構東名古屋病院 饗場郁子さん

医人伝

(2017年2月14日) 【中日新聞】【朝刊】 この記事を印刷する

国立病院機構東名古屋病院 神経内科リハビリテーション部長 饗場郁子さん(54)

画像階段の踊り場に自作の川柳を張るなど、転倒防止に努める饗場郁子さん

 「階段は 『あと一段』が 危ないよ」。階段や壁、トイレなど、病棟の至るところに転倒注意を呼び掛ける川柳が張られている。「上りも下りも、最後の一段が危ない。アナログだけど、この方法が一番効果がある」とほほ笑む。

 また、手すりの近くの壁には「遠い場所 体をのばすと すってんころりん」。車いすから遠くに手を伸ばそうとする患者たちへの注意喚起だ。

 手足を思うように動かせなくなったり、体のバランスが悪くなったりする神経疾患の中でも、進行性核上性(かくじょうせい)まひの患者を多く診てきた。この疾患は、脳内にタンパク質の一種がたまることで前頭葉の機能が低下する。危険を察知する力が衰え、他の疾患と比べてもかなり転びやすくなるが、治療法は確立されていない。

 「転倒して骨折し、入院すると筋力が落ちる。その結果、寝たきりになるという連鎖を断ちたい」と、さまざまな形で転倒防止に努めてきた。入院患者のベッドから手が届く場所にテレビのリモコンを置いたり、転倒予防に有効な体操を促したり。川柳は自作もするが、「患者や家族とも一緒に取り組むことが大事」と、患者や家族、医療職からも募っている。

 名古屋市西区出身で、1987年に名古屋大を卒業。初めは心療内科を志したが、一見、同じ病状に見えても、精神でなく脳に原因があることもある。その場合、精神の面から治療しても患者は回復しない。「治せる病を見落としたくない」と神経内科を選び、春日井市民病院に勤務した。

 94年に移った東名古屋病院では進行性核上性まひの患者が多く、転倒事故が多い。2002年から同僚の医師や看護師らと、神経疾患の患者が転ぶ状況を調べ、それが階段の川柳などの対策に生かされている。

 今では、看護師や作業療法士、管理栄養士ら21人が自主的に集まり、転倒予防の啓発や研究をする。「転倒の背景にあるさまざまな要因を解決するためには、多職種で連携することが必要」と実感する。

 入院患者だけでなく、在宅の要介護者の転倒予防にも力を入れる。「転倒しても仕方がないとあきらめがちになる人もいる。でも、できる対策はたくさんある」。知恵を持ち寄って、安全に暮らせる場づくりを進めるつもりだ。(出口有紀)

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