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〈味な提言〉(2) 旨味(UMAMI)の科学 100年前 日本人が発見

(2017年2月12日) 【中日新聞】【朝刊】【愛知】 この記事を印刷する

名城大農学部教授(応用微生物学研究室) 加藤雅士さん

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 一昨年4月に名古屋大名誉教授の鵜高重三(うだかしげぞう)先生が永眠されました。先生は知る人ぞ知る「世界中の料理の味」に多大な影響を与えた人物です。

 旨味(うまみ)の本体であるグルタミン酸を発酵でつくるための菌を、25歳の若さで発見し、アミノ酸発酵工業の基盤を築いた研究者でした。賛否両論があろうかとは思いますが、現在、グルタミン酸(正確にはグルタミン酸にナトリウムが結びついた物質)が、旨味調味料として料理や食品に加えられ、多くの人々の味覚を満足させています。筆者は鵜高先生の名大の定年までの2年間、同じ研究室の教員としてご一緒させていただきました。実験好きで、たえず前向きだった先生の姿が、今も目に浮かびます。

画像グルタミン酸生産菌を発見し、アミノ酸発酵工業の基礎を築いた故鵜高重三先生。第42回中日文化賞を受賞した=2008年4月撮影

 小麦タンパク質を化学的に分解してつくっていた時代には、高価すぎたグルタミン酸も、発酵生産でサトウキビの糖などから安くつくられるようになりました。これが、鵜高先生の発見の成果だったのです。今や、化学調味料という言葉は適切ではなく、もっぱら旨味調味料と呼ばれています。

 今回は、日本食の要でもある「だし」と「発酵調味料」の共通点である旨味に焦点をあててお話しします。

 旨味は、今から100年ほど前に日本人によって発見されました。東京帝国大(現東京大)の化学科教授であった池田菊苗(いけだきくなえ)博士は、食べ物の旨さというものに興味を持っていました。そして、昆布の煮汁から、グルタミン酸を取り出し、その味を「旨味」と名付けたのでした。グルタミン酸に続き、鰹(かつお)節の旨味がイノシン酸であることや、干し椎茸(しいたけ)の旨味がグアニル酸であることが、やはり日本人によって発見されました。

 日本人は古くから、昆布だしと鰹だしを合わせるとずっとおいしくなることを経験的に知っていました。実際に、グルタミン酸とイノシン酸が合わさると、旨味が飛躍的に強くなる「旨味の相乗効果」と呼ばれる現象が科学的にも証明されています。

 このように、日本は「旨味」先進国といっても過言ではありません。今ではUMAMIという英語になっているほど、旨味という言葉は世界中で認知されるようになりました。

 2002年には、舌にグルタミン酸を感知するための受容体タンパク質(センサー)が発見され、分子のレベルで「旨さ」の理解が進められようとしています。この発見を契機に世界中の科学者も、旨味を甘味などと同じく、味のひとつとして認識するようになりました。

 ところで、どうして人間はこれらの物質を旨いと感じるのでしょうか? グルタミン酸は母乳の中にも含まれ、赤ちゃんも旨いと感じているようです。

 グルタミン酸は体の中で重要な働きをするタンパク質のもとになるアミノ酸のひとつであり、一方、イノシン酸やグアニル酸はDNAなどの遺伝物質をつくるもとになる核酸と呼ばれる物質なのです。人間をはじめとする動物は、生きる上で必要な物質を本能的に旨いと感じることで、長い進化の歴史を生き延びてきたともいえます。

 次回は、日本食に欠かせない発酵調味料(味噌(みそ)、醤油(しょうゆ)、みりんなど)の製造と切っても切れない関係にある微生物、麹(こうじ)菌についてお話ししたいと思います。

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