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多発するペダル踏み違い事故 予防装置 町工場が開発

(2017年2月15日) 【中日新聞】【朝刊】【その他】 この記事を印刷する
画像自身が開発したペダルを取り付けた車を運転する三好さん=三重県名張市で

 アクセルとブレーキの踏み間違いによる車の暴走事故が多発している。運転していたのは、判断力が低下した高齢ドライバーが8割を占めている。こんな事態にストップをかけようと、アクセルを踏みすぎても急加速を抑制できる装置を開発した町工場がある。まだ市販されておらず、自動車メーカーに取り組みを促している。(寺西雅広)

 三重県名張市の金属加工業「三好製作所」が開発したのは、パニックレス・アクセルペダル。アクセルペダルを一定以上踏み込むと、ペダルとアクセルのつなぎ目が外れ、エンジンがアイドリング状態になる仕組みだ。車のアクセルペダルを外して設置する。

 工場の経営者で、仕組みを考案した三好秀次さん(64)によると、運転手はブレーキと思い込んでアクセルを踏み込み、なぜ止まらないのかとパニックになる。この装置を取り付けていれば、車は加速しなくなり、「ブレーキを踏む余裕ができる」と話す。

 開発を始めたのは5年前から。自身も、踏み間違いにより急加速で後進してきた車にぶつかられそうになったためだ。通常は家電部品を作る工場だが、自分の技術を生かせないかと考えた。

 4年前に試作品ができ、特許も取得。中日本自動車短大(岐阜県坂祝町)教授の森本一彦さん(59)の協力で、足をアクセルから外すとバネの力でペダルが元に戻る改良型を昨夏に開発した。

画像車に取り付けたパニックレス・アクセルペダル

 早速、自分の車に取り付け、これまでに1万4千キロ以上を安全に走行してきた。アクセルを踏める度合いは調整でき、「高速道路や上り坂の加速も問題ない」。

 自動車メーカー、スズキの技術者だった森本さんは、「メーカーが検討しなかった発想」と評価する。製作費は1台12万〜13万円だが、大量生産できればコストは10分の1以下になるという。

 一方、埼玉県川口市の機械整備業「ナンキ工業」社長、南平次さん(77)も同様の装置を開発した。アクセルとブレーキが一体化した形で、アクセルを強く踏み込むと自動的に解除されブレーキがかかるようになっており、「STOPペダル」と名付けた。南さんは「作動に必要な力は調整でき、高速道路でも大丈夫」と説明する。

 どちらの製品も、電子制御装置やセンサーは使っておらず、「シンプルな構造なので故障の心配は少ない」(三好さん)。町工場では製造物責任法への対応が整わず、市販していないが、「メーカーの協力を得て広めたい」としている。

自動ブレーキの搭載義務化検討

 警察庁によると、ブレーキとアクセルの踏み間違いによる死亡事故は、全国で2011年からの5年間で226件発生した。そのうち約8割の178件が、65歳以上の運転手だった。

画像STOPペダルを開発した南さん。右のペダルがアクセル、左がブレーキ=埼玉県川口市で

 森本さんは「踏み間違いは若い人にもあるが、高齢者は判断や反応が遅く事故につながりやすい」と指摘する。

 自動車メーカーは、車体前部に設置したセンサーなどで障害物を認識し、自動的にブレーキがかかるシステムを実用化している。国土交通省は全車両に自動ブレーキの搭載義務付けを検討しているが、安全基準はまだない。森本さんは「最先端の自動ブレーキも万能ではない。このペダルと併用すれば、効果が高い」と話す。

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