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〈味な提言〉(5) 米と麹で作る甘酒 腸内の善玉菌増やす効果

(2017年3月5日) 【中日新聞】【朝刊】【愛知】 この記事を印刷する

名城大農学部教授(応用微生物学研究室) 加藤雅士さん

加藤雅士さん

 本稿を執筆中、中日新聞2月20日朝刊に、発酵料理研究家伴乃美名さんの甘酒の記事が掲載されました。あれっ、内容がかぶった。それくらい、今、甘酒がブームのようです。

 筆者も最近、甘酒作りにハマっております。スーパーなどに売っている乾燥麹(こうじ)を使うと簡単に作ることができます。冷蔵庫で約1週間保存できますので、1週間分まとめて作り、家族で毎日少しずつ飲んでいます。作り方やレシピは他の記事に譲るとして、ここでは、学術の立場から甘酒を紹介します。

 甘酒には大きく分けて2種類あり、酒粕を溶かして砂糖などで味を調整した「酒粕甘酒(さけかすあまざけ)」と、米と麹から作る「麹甘酒」があります。前者はわずかながらアルコールを含みますが、後者はアルコール発酵をしていませんので、全くのノンアルコール飲料です。子供でも安心して飲むことができます。今日の話題はこの麹甘酒についてです。

 前回まででお話ししたように、麹菌は酵素をつくり、いろいろな食物を分解してくれます。この力を利用して、米を分解したのが甘酒なのです。

乾燥麹(左側)と筆者作の甘酒。器も筆者作乾燥麹(左側)と筆者作の甘酒。器も筆者作

 細かいことをいうと、発酵は麹をつくるところまでで、甘酒づくりの段階は発酵ではなく、麹の酵素による分解反応です。約60度で7~10時間保温しますので、この条件では普通の微生物はほとんど生育しません。ただ、麹がつくった酵素はどんどん働き続けます。米にはでんぷんのほか、タンパク質も含まれていますので、できた甘酒にはブドウ糖や麦芽糖、その他のオリゴ糖やアミノ酸がたっぷり含まれています。この他、ミネラルや疲労回復効果のあるビタミンB群も含まれますので、甘酒は「飲む点滴」とも呼ばれて、エナジードリンクとも考えられます。

 甘酒は冬の飲み物のイメージが強いですが、江戸時代には夏バテの対策として夏に冷やして飲まれていたそうです。俳句でも、甘酒は夏の季語なのだとか。1日の始まりの朝食に、あるいは疲れのたまった日の夜食などに、一杯の甘酒はどうでしょうか?(まさに味な提言!)

 まだまだ、最新の研究でどんどん良い効果が見つかっているようですが、その一部を紹介しましょう。

 甘酒の中に含まれている食物繊維やオリゴ糖の作用で、腸内の微生物環境が改善されます。平たく言えば、悪玉菌と呼ばれるバクテリアが減少し、ビフィズス菌などのような善玉菌が増えるわけです。腸には通常100兆個の細菌がすんでいるといわれ、日々細菌との攻防が行われています。腸内環境を整えることは免疫力を高めることにつながるのです。この他、便秘改善や美肌効果、血行促進効果、ゆるやかに血圧を下げる効果なども報告されています。

 筆者のお勧めは甘酒の豆乳割りです。甘酒と豆乳を1対1で混ぜて電子レンジで温めて飲みます(夏は冷えたままでも良し)。大豆タンパク質や大豆イソフラボンで、さらに栄養が強化され、しかも飲みやすいので、甘酒や豆乳の苦手な人にもぜひ一度トライしてもらいたいです。

 さて次回は、発酵食品に大事なもう一つの微生物、酵母のお話をします。

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