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ネット情報氾濫/救急医の多用 小児医療 親に正しい知識を

(2017年3月7日) 【中日新聞】【朝刊】 この記事を印刷する

愛知・岡崎 市民団体が講座

画像小児科の賢いかかり方を母親たちに紹介する野村さちいさん(左)=愛知県岡崎市で

 愛知県岡崎市で子どもの医療に携わる看護師や医師らが、子育て中の親に子どもの病気や子育ての知識を伝える市民団体「つながる ひろがる 子どもの救急」(つなひろ)を設立した。軽い症状なのに救急医療に駆け込む保護者が相次ぐ一方、インターネット上に氾濫する情報に振り回され、医師の助言に耳を傾けないケースもあるためだ。「子どもたちが最善の医療を受けられる環境を整えたい」と、メンバーの看護師らは市内で講座を地道に開いている。 (寺本康弘)

 「お医者さんにかかったときは、お子さんの状態を詳しく先生に伝えてくださいね」

 岡崎市の子育て支援施設で2月下旬、市内のクリニック「竜美ケ丘小児科」の看護師野村さちいさん(39)が、3、4カ月の乳児を連れた母親17人にアドバイスした。生後数カ月の子どもたちに起きる発熱やおう吐、肌荒れなどの症状と医院のかかり方を紹介する講座で、参加した母親は子をあやしながら熱心に耳を傾けた。

 野村さんは、同小児科院長の鈴木研史さん(48)らとともに、つなひろを昨年4月に発足させたメンバーの1人。市内の子育て支援施設の母親教室に出向き、3歳児までの保護者を対象に、かかりやすい病気や予防接種、緊急時の対応など関心の高いテーマを説明している。

 きっかけは、インターネットに出ていたり友人から聞いたりした情報を信じ込み、医師や看護師が示した治療法やアドバイスには耳を貸さない保護者に出会ったことだ。

 例えば、乳児の肌荒れ治療で軟こうのステロイドを処方すると、「使いたくない」と断る親がいるという。理由を聞くと「ママ友に聞いたから」。ネット上で副作用が強調され、誤解を生んでいることも原因のようだ。その場ではっきりと言ってくれる保護者には説明できるが、何も聞かずクリニックに不審を抱いたまま、結局治らずにいる子どもがいるとの懸念もある。

 医療機関側にも反省点はある。小児科の診察では、子どもの病状を見極めるだけで時間がかかり、最近の治療法の変化などを十分説明できていないからだ。パンフレットや冊子は作られているが、それだけでは十分に保護者に伝わらない。

 このため、つなひろの活動は、保護者の元に自ら出向き膝をつき合わせて向き合うことに力を注ぐ。クリニックの昼休みの時間や午後の診療がない日を利用し、市内6カ所の子育て支援施設まで出掛ける。たまたま子連れで遊びに来ている保護者にも参加してもらいたいからだ。昨年4月以降、開いた講座は24回に上る。

 「直接説明を聞けるので、その場で質問もでき、疑問を解消できる」と話す母親も。参加者は徐々に増え、評判は口コミなどで広がっているようだ。

 「医師が話をするとどうしても講義形式になりがちで、なかなかお母さんの本音が聞きづらい。その点でも野村さんがお母さんたちの輪に飛び込んでいって話をすることには意義がある」と鈴木さん。

 野村さんは「小児医療は医療者と保護者が一緒に子どもを見ていくことが大切。保護者にも基本的な医療の知識を身に付けてもらう必要がある」という。

 活動を通じて、医療者側も親から多くを学べると感じている。母親が子育て中に不安になる点や最近の子育てなど、保護者との会話の中から情報が入手できるようになったという。

 野村さんは「この活動で、家庭やクリニックでの医療をしっかりしたものにしたい。それは救急医療を守ることにもつながるはず」と重要性を訴えている。

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