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身近な相談 薬剤師が対応 発足から半年「健康サポート薬局」

(2017年3月7日) 【中日新聞】【朝刊】 この記事を印刷する
画像薬を渡す小原博一さん(左)。安心して相談ができるようカウンターの仕切りを高くした=愛知県豊川市で

 厚生労働省は、薬剤師が地域住民の健康管理を積極的に支援する「健康サポート薬局」制度を、昨年10月から始めた。調剤した薬を渡すだけの場所になりがちだった調剤薬局について、住民の相談に乗って大衆薬や健康食品を紹介したり、健康教室を開いたりと、より多くの機能を持たせたい考えだ。軽い病気は病院に行かずに自ら手当てをしてもらうことで、高齢化で膨らむ医療費を抑える狙いもある。 (稲田雅文)

 「これは吸う薬です。使い方を説明するので、今ここで試してみましょう」。2月下旬、愛知県豊川市の「あすなろ薬局」を訪れると、薬剤師の小原博一さん(38)が、隣接する内科医院から来た男性患者に服薬方法を指導していた。

 患者のためのいすや薬剤師が応対するカウンターがあり一見、他の調剤薬局と違ったところはないが、一角には風邪薬や解熱鎮痛薬、下痢止めなど約50種類の大衆薬(医師の処方箋がなくても買える一般用医薬品)が並び、入り口と店内には「健康サポート薬局」の看板が掲げられる。同県内には3カ所のみで、全国でもまだ152カ所(1月末時点)しかない。

 日ごろこの薬局に血圧の薬の調剤を依頼している市内の60代男性は「病院へ行くほどではないが、頭痛がする」と来局した。健康相談に乗るための研修を受けている小原さんは、血圧の薬と一緒に飲んでも支障がない大衆薬を紹介。悪化した場合は病院へ行くよう助言した。小原さんは「健康管理について相談できる場所として、気軽に薬局を使ってほしい」と話す。

 医薬分業が進み、病院で医師から処方箋をもらって、近くの調剤薬局で薬をもらうことが普通になった。患者が複数の病院からもらった処方箋を「かかりつけ薬剤師」が一元管理し、薬の重複や飲み合わせの悪いものがないかチェックすることを狙い、国が分業を進めたためだ。一方で、各種の大衆薬を置いていない調剤薬局も多く、処方箋を持っていないと足を運びにくい場所になった。

 健康サポート薬局では、大衆薬や介護用品などの販売もするほか、血圧や血糖値などを調べる機器も置いて、薬剤師が住民の健康管理を支援する。必要があれば医療機関や介護施設、相談窓口を紹介する。どこにあるかは、都道府県がネットで提供する医療機関や薬局の検索サービスで調べられる。

 厚労省は、医療と介護が一体となって提供される体制を整える一環として、2025年までに中学校区ごとに1カ所、健康サポート薬局を置きたい考え。現在、調剤薬局は約5万8千カ所あり、うち1万カ所程度がなる計算だ。厚労省の担当者は「今までは病気になった後に足を運ぶ場所だったが、元気なうちから相談を受ける役割を薬剤師に担ってほしい」と話す。

 都道府県などに届ければ、健康サポート薬局として開業はできるが、普及には課題も。研修を受けた薬剤師が営業時間中は常駐する必要がある上、患者宅へ出向く在宅対応も求められる。このため、複数の薬剤師を置かねばならず、一人だけの薬局は開業が難しい。届け出ても調剤報酬の加算はなく、せっかく置いた大衆薬が売れ残る可能性もある。

 それでも、制度に期待を寄せる薬剤師は多い。愛知県薬剤師会の加藤広人専務理事は「医薬分業で病院の隣の門前薬局が増え、薬剤師の役割が見えにくくなっている。昔の薬剤師は身近にいる科学者のような存在で、さまざまな相談を受けていた。健康を守る専門家としてコミュニケーション能力などの質を高めていきたい」と語る。

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