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〈生活部記者の両親ダブル介護〉(12) 母が「もぐもぐ」 感動 自分で食べてる!

(2017年3月15日) 【中日新聞】【朝刊】【その他】 この記事を印刷する
画像妻が写した証拠写真。妻からのメールの件名は「おかあさんもぐもぐ」でした

 アルプスの少女ハイジも、足が悪い親友の「クララが立った!」時はこういう気持ちだったのだろうか。母(81)が自分の手でものを食べた。

 一報をもたらしたのは妻だ。「お母さんが自分で食べてる」。証拠写真も見せられる。確かに左手にわん、右手にスプーンを持っている。次の休み、真偽を確かめるべく車を走らせる。

 道が混み、着いた時は食事を終える寸前だった。手の消毒ももどかしく病室に向かう。見れば、ご飯もおかずもミキサーにかけた流動食だが、5皿とも完食している。「お母さん、全部自分で食べたのですか」。いきなりの問いにスプーンを持ったままキョトンとする母。お盆を下げに来た看護師さんも「良くなったねえ。うれしくてこっちまで泣いてまうわ」と笑う。

 郷里の鹿児島から母の姉妹が訪ねてきたころを境に、口からものを食べるようにはなっていた。だが、首から入れていた点滴まで外れるとは。何だかほっとして体から力が抜ける。ベッドの柵をつかんで、しゃがみこむ。柵に額を付けて言った。「お母さん、よかったね…」

 介護の始まりはいつか。実感としては「下の世話」が出始めるころだと思う。父(80)も最初は時々、尿意を覚えても間に合わない程度だったが、やがて、間に合わないのは尿だけでなくなった。私も週末は、当時勤務していた東京から帰ることが多くなった。

 家に着くとまず庭の水場を見る。案の定、汚れた下着がバケツの中で水に漬かっている。腰を手術したことのある母にはしゃがんでの洗濯仕事は難儀だ。何か浮いているがやるしかない。袖をまくり、両手をその水に差し入れた。(三浦耕喜)

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