つなごう医療 中日メディカルサイト

ノバルティスと元社員無罪 東京地裁 論文、広告に当たらず

(2017年3月17日) 【中日新聞】【朝刊】【その他】 この記事を印刷する

 製薬大手ノバルティスファーマの降圧剤ディオバンを巡る研究論文データ改ざん事件で、薬事法(現医薬品医療機器法)違反(誇大広告)の罪に問われた元社員白橋伸雄被告(66)に、東京地裁は16日、無罪判決(求刑懲役2年6月)を言い渡した。

 辻川靖夫裁判長は、データ改ざんを認めながらも、発表された論文は薬事法が規制対象とする広告には当たらないと判断した。法人としてのノ社も無罪(求刑罰金400万円)とした。

データ改ざんは認定

図

 判決によると、被告はディオバン臨床実験の解析担当者として京都府立医大の研究チームに参加。ディオバンを投与しなかった患者の疾患発生数を40件水増しするなどしたデータや図表を研究者らに提供し、「投与した患者は脳卒中や狭心症の発生率が低かった」との論文を海外の医学誌に掲載してもらった。

 薬事法は、医薬品の効能に関する虚偽や誇大な広告を禁止する。判決はまず、広告が顧客の購入意欲を誘うための手段であることが罪の成立要件だと指摘。その判断に当たっては、広告を掲載する意図や目的を重視する必要はないとした。

 その上で「学術雑誌への掲載自体が顧客に購入意欲を喚起させる手段とは言えない」と結論付けた。

「自信を持って告発したのに」 戸惑う厚労省

 「想定外の判決だ」。ノバルティスファーマと元社員に無罪判決が言い渡された16日、2014年にノ社を刑事告発した厚生労働省幹部らは「意外だ」と戸惑いを見せた。検察幹部も「まさかの判決で到底容認できない」と厳しい表情を浮かべた。

 改ざんしたデータに基づく論文を医学誌に掲載させた点が「広告」に当たるとして告発に踏み切った厚労省。判決を知った幹部は「自信を持って告発したのに」と驚いた様子。別の幹部も「まったく想定していなかった判決。控訴するかどうか、検察の対応を見守る」と言葉少なだった。

 一方、ある職員は「薬事法違反には当たらないとされたが、データを改ざんした事実は認められている。患者のための医療であり、製品を売るためのうそは許されない」と語気を強めた。

 ある検察幹部は「広告に当たるというのは、薬事法を所管する厚労省のお墨付きを得た解釈なのに、裁判所が覆していいのか」と疑問を呈し、「証拠不足ではなくて評価の問題で、上級審の判断を仰ぐ必要がある」と語った。

薬事法の限界露呈

 医薬品問題に取り組む民間団体「薬害オンブズパースン会議」事務局長の水口真寿美弁護士の話 大規模な研究不正があっても、刑事責任を問うには、薬事法(現医薬品医療機器法)の広告規制に引っかけるしかないのが現状で、その枠組みの限界を露呈したと言える。研究不正そのものを罰する法制度が必要だ。無罪判決ではあるが、データ改ざんがあったという点は認定されており、ノバルティスファーマが免責されたとは言えない。

道義的責任感じる

 ノバルティスファーマの話 無罪判決ではあるが、問題の本質は臨床研究で弊社が適切な対応を取らなかったことにある。日本の医学・医療の信頼を失わせてしまったことに社会的、道義的責任を感じている。

中日新聞広告局 病医院・薬局の求人