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対面のルール作りを 骨髄移植患者とドナー SNS通じて実現?/「バンク」普及に期待

(2017年3月21日) 【中日新聞】【朝刊】 この記事を印刷する
画像骨髄移植のドナーと患者の対面問題について意見を交わすパネリストら=名古屋市中村区の名古屋第一赤十字病院で

 骨髄移植を受けた患者と提供者(ドナー)の対面について「条件付きで認めるべきではないか」との声が上がっている。「感謝を直接伝えたい」という患者の希望は1991年の日本骨髄バンク発足当初からあるが、利益供与につながるなどとして、匿名の手紙のやりとりにとどめ、対面は認められていない。しかし、会員制交流サイト(SNS)の発達で患者とドナーが知り合い、実際に対面したケースが相次ぐなど、一定のルールが必要な状況になりつつある。 (稲田雅文)

 「ネットでは、ドナーが患者から届いた手紙の写真をSNSに載せている事例がある。文面が読めなくしてあっても、イラストやレイアウトなどから、書いた本人が見れば分かる。実際に対面が実現したケースもあるようだ」。2月、認定NPO法人「あいち骨髄バンクを支援する会」(名古屋市)が、名古屋第一赤十字病院(同市)で開いた対面について考える座談会。同会副理事長の北折健次郎さん(58)は、こう問題提起をした。

 骨髄バンクは▽ドナーが金銭を要求したり、患者がお礼を渡したりする利益供与につながる▽再発した患者がドナーに再提供を強要する恐れがある−などとして、ドナーと患者の対面を認めていない。代わりに1年以内に2回まで、匿名で手紙を取り次いでいる。

 海外ではバンクのある約50カ国のうち、30カ国で対面を認めている。国内では、2003年に当時の骨髄移植推進財団が条件付きで対面させる方針を打ち出したが、厚生労働省の審議会で慎重論が出たため見送られ、進展していない。

 ただ、対面が実現した事例はすでに複数ある。民間が1989年に立ち上げた東海骨髄バンクで第一号の移植患者となった橋本和浩さん(54)=堺市=は97年、バンク関連のイベントで「この中に命の恩人はいませんか」と呼び掛けたところ、偶然参加していたドナーの田中重勝さん(67)=岐阜県大垣市=が名乗り出て対面を果たした。橋本さんは「直接お礼が言いたいとずっと思っていた。会えて良かった」と喜びを振り返り、田中さんは「命を助けることができたという実感がより強くなった。提供時と同じように、第三者が立ち会ってお互いの意思が確認できれば、対面すればいいと思う」と語った。

 2人の対面は、それぞれ骨髄移植普及のための活動に携わっていたため機会が巡ってきたが、SNSの普及で不特定多数に情報発信をすることが容易になり、ネット上でドナーや患者を捜すこともできるようになった。北折さんがネットを調べたところ、患者の手紙が掲載されている事例が20以上見つかったという。「水面下で対面が実現している可能性は非常に高い。“日本では認められていないから何が起こっても知らない”という態度で本当に良いのか」と疑問を呈した。

 移植を受けた20代の女性患者は「SNSを通じてストーカー被害が発生した事件もある。“ドナーを捜したい”との呼び掛けに、別人がなりすましてこたえるかもしれない。事件が起こってからでは遅い」と、一定のルール作りの必要性を指摘した。

 対面の実現を関係者が目指すもう一つの理由は、ドナー登録者の増加につながるとの期待だ。現在、約47万人がドナー候補として登録しているが、新規登録者が伸び悩み、55歳の年齢制限を迎える登録者が増え、今後減少していく可能性がある。

 全国骨髄バンク推進連絡協議会(東京都)顧問の大谷貴子さん(55)は、患者との対面がドナーの家族に影響を与えた事例を紹介。家族が命を救った事実に感動してドナー登録をし、その後に提供につながったという。「感動をマスコミなどを通じて広く伝えることで、骨髄バンクの理解につながる」と対面の実現に期待した。

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