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「頼みの綱」重責を力に 滋賀県立小児保健医療センター 吹上謙一さん

医人伝

(2017年3月21日) 【中日新聞】【朝刊】 この記事を印刷する

滋賀県立小児保健医療センター(滋賀県守山市) 吹上謙一さん(44)

画像子どもたちに優しく語り掛けながら診察する吹上謙一さん

 白衣は着ない。「子どもたちを怖がらせてしまう」ので普段着のまま診察する。整形外科では、全国有数の治療実績を誇る滋賀県立小児保健医療センターには、最後の頼みの綱として訪れる患者は多い。柔和な表情と温かな語り口で、子どもたちの緊張をほぐす。

 京都市出身。乳児のころ、脚の付け根の関節が外れてしまう股関節脱臼と診断され、器具を付けて治療した。自分と同じような病気の人を助ける医師を志し、京都大医学部へ進学。1998年に卒業後、京阪神の病院の整形外科で勤務した。2004年から、京大再生医科学研究所で骨や軟骨の再生医療研究に取り組んだが、4年が過ぎたころ、ふと思った。

 「自分がなった病気を治せる医師になり、世の中に恩返しをしたいと思っていたはず。そんな医師に、自分はまだなれていないのではないか」

 小児整形外科治療で名高い水野記念病院(東京)の鈴木茂夫医師に相談し、08年から5年間、同院で勤務。鈴木医師の指導の下、同医師が担う500件余りの手術に関わり、実践を積んだ。患者には、他の病院で治療がうまくいかず、何度も入院や手術を繰り返した子どももいた。「必ず治す」という強い信念で治療に当たる大切さを、鈴木医師の姿から学んだ。

 13年、縁あってセンターで勤務することに。股関節脱臼や血行障害で大腿(だいたい)骨の骨頭部が壊死(えし)する「ペルテス病」、脳性まひなどの治療の最前線に立つ。センターで行う年410件の手術のうち5割を担当する。生まれつき脊椎の一部が形成されず、歩行困難だった二分脊椎症の子どもが、手術して歩けるようになったことなど、印象に残る治療は数知れない。「治癒力は大人よりすごい」と子どもたちの成長に驚かされる毎日だ。

 悩みの種は、患者は年々増える一方、医師のなり手が少ないこと。治療は子どもの人生を左右する。責任の重さから、センターを離れる医師も少なくない。「もちろんプレッシャーはある。ただ、県外からわらにもすがる思いで、ここで治療を受けようと来てくださっている」。思いを知れば知るほど、裏切れない気持ちが強まる。

 「ここに来て良かったと思ってもらえるよう、自分のもとを訪れる子どもには、特別な思いで治療をしたい」。常に患者に心を寄せる。 (浅井弘美)

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