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<なくそう 長時間労働>残業100時間の暮らしとは・・・

(2017年3月27日) 【中日新聞】【朝刊】【その他】 この記事を印刷する

帰宅は深夜 だんらん遠く 「睡眠、よくて5、6時間」

グラフ

 長時間労働の抑制を目的に政府が取りまとめた残業の上限規制では、1カ月の特例上限が「100時間未満」とされた。はたして1カ月で計100時間の残業というと、どんな暮らしになるのだろうか。労働法制に詳しい専門家と、シミュレーションをしてみた。(三浦耕喜)

 一緒に考えてもらったのは、名古屋北法律事務所(名古屋市)の白川秀之弁護士。過労や残業代未払いなど、多くの労働裁判を手掛けている。

 「百時間残業」はどんな生活リズムとなるのか。例として、来月の2017年4月でみてみよう。

 週休2日として、土日祝日を除くと、4月の労働日数は20日だ。労働基準法で定める基本の労働時間は1日8時間、週40時間。1カ月では160時間だ。1日のリズムでいえば、昼に1時間、休憩したとして、午前9時に出勤し、午後6時に退社すれば労働時間は8時間。いわゆる「定時」の働き方だ。

 仮に通勤時間を片道1時間とすれば、午後7時には自宅に帰ることができる。家族で夕食を共にすることも可能だろう。

 「では、これに『百時間残業』を当てはめてみましょう」と白川さん。100時間を労働日数の20日で割れば、残業時間は1日5時間となる。午後6時以降にこれを加えると、午後11時まで働くことになる。夕食時に休息を取れば、これも労働時間にはカウントされない。「忙しくて、夕食は職場でぱっぱと済ませる人も多いでしょうが、午後11時を過ぎても働くという状態にもなり得ます」と解説する。

 通勤時間も労働時間には含まれない。同様に片道1時間とすれば、帰宅は午前零時を過ぎることにもなりかねない。家族のだんらんの余裕もなくなる。

 翌朝に出勤のため家を出る時間は午前8時。そうすると、着替えや入浴、食事、身支度、家事など生活に必要な時間は、帰宅から翌朝の出勤までの8時間で済ませなくてはならない。

 8時間は人間として理想的な睡眠時間とされる。だが、家に居る時間そのものが8時間しかない。「結局、睡眠時間を削って、必要最低限の家事をすることになります。よくて床に入って5、6時間というところでしょうか」と白川さん。

 余談ながら、記者は過労で倒れたことがある。その経験から考えると、仕事のストレスが高まれば、脳の興奮は続いて、横になってもすぐには寝付けない。そのまま白々と夜が明けていくのは、何ともやるせない気持ちになる。

 「週末は疲れ切って、ひたすら休むような状態。洗濯や掃除など、たまった家事も土日に済ませなくてはならない」と白川さん。土日は休みでも、自分の時間を楽しむにはほど遠い。

 政府の案では、残業について「2〜6カ月の月平均80時間以内」も認める方針だ。では、残業が月80時間ならどうか。白川さんは「帰宅が1時間早くなる程度です。それが半年続くことになります」という。さらに、「繁忙期となれば実際は土日のうち、どちらかは出てきて働くという職場が多いのではないでしょうか。ますます身にはこたえるでしょう」。

 白川さんは「すでに心疾患で死亡した労働者について、発症前1カ月の時間外労働が85時間余でも過労を認めた判例がある。上限規制は、厚生労働相告示で定める月45時間に基づくべきだ」と話している。

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