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乳がん治療、連携を強化 福井県立病院 大田浩司さん

医人伝

(2017年4月4日) 【中日新聞】【朝刊】 この記事を印刷する

福井県立病院(福井市) 外科医長 大田浩司さん(45)

シリコーンを手に「いかにきれいに乳房を再建するか」と語る大田浩司さんシリコーンを手に「いかにきれいに乳房を再建するか」と語る大田浩司さん

 肌のつや、髪の潤い、手の指の間の筋肉、爪が裂けていないか...。乳がんが疑われる患者の全身に目を光らせ、検査では分からない変化を探し出す。

 もともと専門が「消化器外科」で、栄養状態から患者の症状を観察していたことが今も診断に生きている。石川県根上町(現・能美市)出身、金沢大医学部卒。2002年、乳腺専門医が不在になっていた福井県立病院(福井市)に赴任した。「畑違いもいいところだった」と振り返る。最初の半年は乳がん患者を受け入れない体制からのスタートだった。

 当時はまだ、世間の乳がんへの認知度も低かった。「都会と地方の格差」にもがくぜんとした。地方の病院は乳房の温存率などで圧倒的に劣り「都会の病院が導入した新しい治療法や薬剤が福井に来るまでに5年かかっていた」と話す。

 最新の情報に触れるため、学会や研究会には可能な限り出席した。「未熟でも研究成果を発表し、名前と熱意だけでも覚えてもらおう」との思いで、この15年間での発表は150回、論文も20編を超えた。

 10年からは2年間、乳房再建の第一人者がいる関西地方の専門病院で「修業」した。自費で通って手術に立ち会い、いかに美しく温存、再建するかを学んだ。あらかじめ全ての計画を立て、再建を見据えて乳がんを摘出する技を習得した。

 乳がん治療は、形成外科医をはじめ綿密な連携が欠かせない。院内の協力体制を築くため、5年ほど前から院内の薬剤師や放射線技師、看護師でマラソンチームを結成した。福井市であったマラソン大会にピンク色のシャツを着て参加し、乳がん検診を呼び掛ける「ピンクリボン運動」をPR。啓発活動をしながら仲間の士気を高めている。

 次第に院内外の評判は上がり、乳がん摘出手術の症例数は毎年10件ずつ増加。11年に同院の乳腺外来は医師2人体制になり、13年に再建手術を本格化させた。患者から「迷ったけど手術を受けてよかった」と言われることがうれしい。

 現在取り組んでいるのが、乳がんが発生する遺伝的な要因の解明。「まだまだ分からないことが多い。地域を挙げて乳腺診療の専門性を高める必要がある」と力を込める。趣味は水生植物の栽培。「まったりとした性格」と自己分析するが、目の奥には地方医療への熱い思いがあふれていた。 (梶山佑)

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