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断酒へ連携 強く太く アルコール依存症 三重県が対策計画 

(2017年4月3日) 【中日新聞】【朝刊】【三重】 この記事を印刷する
画像県が3月に開いた依存症の知識を深める講演会。県の計画では依存症に詳しい専門家を研修などで育てる考えだ=県庁で

 アルコール依存症の患者をいち早く見つける三重発の取り組みが全国から注目を集めている。病院や警察、保健所などがネットワークをつくり、飲酒運転や家庭内暴力(DV)、自殺未遂などの現場で依存症の芽を見つけ、治療につなげる取り組みは「三重モデル」と呼ばれる。県は今月からネットワークの拡充に乗り出す。(森耕一)

 県内の依存症患者は推計で1万6千人。県が5年の期限で始める「アルコール健康障害対策推進計画」では、まず内科医と依存症専門医をつなぐことに力を入れる。

 計画を作った県の部会メンバー、四日市市の依存症専門医・猪野亜朗さんによると、ある60代男性は肝障害で内科を受診し、いったんは治ったが、数年後に再発した。飲酒が原因と判断した内科医から連絡を受けた猪野さんは、男性と対話を重ねる中でランニングを勧めた。男性はランニングが新たな生きがいになり、この5年間、酒を一滴も飲んでいないという。

 猪野さんが四日市市内で内科医と連携を始めたのは20年以上も前。家庭を失い、心を病み、命も危うくなった依存症患者の多くは、その何年も前から肝臓などの病気で通院していることに気付いたからだ。

 依存症患者をつないでくれる内科医数人と連絡を取り合う中で、早期治療の実績を積んでいき、三重モデルと専門家の間で呼ばれるようになった。「酒をやめられない人は、体と心の病気、家族や職場など複数の問題を同時に解決しないと回復できない」。猪野さんは、多分野の専門家が連携することが重要だと確信する。

 県の計画では、猪野さんたちが個人のつながりで進めてきた連携を拡大する。依存症治療ができる病院を県内に4カ所以上指定し、内科医が必要に応じて専門医をすぐ紹介できるようにする。

画像猪野亜朗さん

 一方、依存症は飲酒運転やDVにもつながるため、猪野さんたちは警察や保健所などとも協力を進めてきた。県が13年に制定した飲酒運転ゼロ条例は、猪野さんらの働き掛けもあり違反者には依存症かどうかの受診が義務付けられた。その結果、受診者の約6割が依存症の疑いがあると診断され、治療が始まったケースもあるという。

 計画では、警察官や救急隊員、児童相談所、保健所の職員との連携を深めるため、研修などを通じて依存症に詳しい人材の育成に力を入れる。例えば、DVなどの現場に立ち会う警察官らが、当事者に依存症の疑いがあるかを判断できれば、専門医の受診を勧めることができる。猪野さんは「びら一枚渡すだけで治療に進める人もいる」と早期実現を望む。

 治療を始めると、次は飲まない決意を持続させることが重要になる。患者団体「三重断酒新生会」は患者同士がなぜ酒に依存したか語り合い、自分を見つめ直している。事務局長で依存症当事者の宮崎学さん(64)は「会員同士の人間関係を深めることが、断酒のモチベーション持続につながる」と話す。計画は、こうした自助団体の支援も目指す。

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