つなごう医療 中日メディカルサイト

救急 蘇生中止に初指針 患者書面と医師指示で

(2017年4月8日) 【中日新聞】【朝刊】【その他】 この記事を印刷する
救急隊が蘇生中止する手順

 各地の消防本部や救急隊員、医師らでつくる「日本臨床救急医学会」は7日、終末期で心肺が停止した患者に対し、救急隊が蘇生措置を実施するかどうか判断する際の指針を公表した。本人が蘇生を望まない意思を事前に書面で残し、かかりつけ医らの指示が確認できた場合は、救急隊に蘇生中止を認める内容。救急現場の対応ルールを初めて指針で明確化した。

 背景には、終末期の高齢者らが蘇生を望まない意思表示をしていても、動転した家族や老人ホームの職員らが119番通報する例が相次いでいることがある。患者の「穏やかに逝きたい」といった希望を尊重するとともに、救命任務との間で葛藤する救急隊の悩みを和らげるのが狙い。

 救急現場の判断に一定の後ろ盾になりそうだが、指針に拘束力はなく、各地の消防本部などの運用に委ねられる。

 指針では、119番で現場に駆け付けた救急隊は、心肺蘇生を希望しない患者の意思を医師の指示書などで示された場合でも、まずは蘇生を開始するのが原則とした。蘇生を続けながら、かかりつけ医に連絡し、医師の指示を直接確認できたら、措置を中止する。

 かかりつけ医と連絡が取れない際は、救急医療に精通した当番医に指示を求める。家族が蘇生を希望したり、事故や外傷などが原因と疑われたりする場合は、患者の意思にかかわらず蘇生を続ける必要があるとした。

 併せて、かかりつけ医が患者の意思に沿って事前に作っておく指示書のひな型も策定。自治体や消防、医師会などが参加する各地域の「メディカルコントロール協議会」が今後、指針に沿って対応するかどうか決める。

 同学会は「蘇生を望まないのであれば119番に至らないのが理想」として、医療・介護の関係者への働き掛けが重要と指摘。総務省消防庁や厚生労働省にも、対応を検討するよう求めた。

悩み残る現場 「法的整備を」

 日本臨床救急医学会がまとめた指針について、各地の救急現場からは「これだけでは悩みは解消しない」「訴訟などのトラブルになる可能性を考えると、法的な整備が必要」といった声が上がった。

 蘇生を望まない患者の意思と救命の原則の間で救急隊が葛藤する例は、各地で報告されている。厚生労働省研究班の調査では、一定の経験を積んだ救急隊員の16%が「駆け付けたところ、本人が蘇生を希望しない意思を書面で示しているケースに遭遇したことがある」と回答した。

 東京消防庁のデータ(2015年)では、心肺停止状態で搬送された患者のうち1カ月後も生存していた人は5.1%にとどまる。しかし、総務省消防庁の基準で救急隊は応急処置を行うことが原則と定められており、蘇生中止に対する現場の抵抗感は強い。

 秋田市消防本部の担当者は「うちでは蘇生を希望しないという書面があっても、人工呼吸と胸骨圧迫による心臓マッサージは行うと決めている。家族にも救急業務としてやらざるを得ないと説明している」と話す。

中日新聞広告局 病医院・薬局の求人