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〈味な提言〉(11) 手前味噌な話(上) 1年熟成 風味、味良し

(2017年4月16日) 【中日新聞】【朝刊】【愛知】 この記事を印刷する

名城大農学部教授(応用微生物学研究室) 加藤雅士さん

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 名城大には春日井市に農場があることを以前にお話ししましたが、その敷地内には食品加工実習施設があります。毎年、農場で取れた大豆で学生と一緒に味噌(みそ)を仕込んでいます。

 味噌には大きく分けて米味噌、麦味噌、豆味噌があります。あれっ? 味噌って大豆から造るんじゃないの?と思われる方もいらっしゃるかもしれませんね。米味噌は米の麹(こうじ)と大豆、塩から造ります。麦味噌では麦麹と大豆、塩を原料に、豆味噌では豆そのものを麹にして、塩と一緒に仕込みます。豆味噌が塩と大豆のみという一番シンプルな材料なのですが、熟成期間が最も長く、手間ひまがかかります。

 東海地方は、全国的に見ると珍しい豆味噌が主流の地域です(豆味噌の素晴らしさについては次回に詳しくお話しします)。

 学生と一緒に造る味噌は全国的には最もポピュラーで、熟成期間の短めの米味噌です。造り方を簡単に紹介しましょう。

 甘酒を造るのと同様に、乾燥米麹を使用すると簡単に造れます。乾燥麹を水で戻して、塩を加えよくまぜ合わせておきます。これを「塩きり麹」といいます。豆は約3倍の水に一晩つけておきます。指で押さえて軽くつぶれるまで煮た後に(圧力鍋なら20分程度、普通に煮ると4、5時間は必要です)、豆をすり鉢などでつぶします。道具がない場合は、ビニール袋に入れて手や足で押しつぶすと良いようです。硬さは好みに応じて豆の煮汁で調整します。

 30度以下まで冷めたら、塩きり麹とよくまぜ合わせて、空気をよく抜きながら食品保存容器などに入れ、ラップで表面を覆い、ふたをして室内の涼しい所に置いて熟成させます。半年から1年でおいしく食べられるようになります。麹菌の酵素の力により、大豆のタンパク質が分解され、旨味(うまみ)のもとのアミノ酸に変わっていきます。

画像食品加工実習施設で味噌造り実習をする学生たち=春日井市で(筆者撮影)

 熟成期間中には、比較的高い塩分でも生育できる耐塩性酵母(パンやお酒造りの酵母とは違います)が育ち、アルコールやエステルと呼ばれる成分をつくります。これが味噌に良い香りを付け加えます。また、耐塩性乳酸菌も生育して、味を調えてくれます。味噌の中に一つの生態系が出来上がっているともいえます。

 できた味噌はとても風味がいいので、キュウリに載せてそのまま食べてもおいしいですが、やっぱり味噌汁が一番ですね。料理を全くしないという学生や、一人暮らしの下宿生などでも簡単に作れる方法を教えています。カップなどの入れ物に、市販のカツオだしの粉とワカメなどが入った乾燥味噌汁の具を入れてお湯を注ぎ、1年熟成の味噌をスプーンに適量とって溶かすだけで、あら不思議。「おかわりしていいですか?」と聞く学生が出てくるほどです。

 やはり、手前味噌っておいしいですよね。自分の造った味噌ならばなおさらです。ぜひご家庭でも手前味噌を造ってみませんか?

 名城大の農場では春に田植え祭と秋に収穫祭を行いますが、この手前味噌とたっぷりの野菜が入った豚汁を学生たちが作って参加者に振る舞います。残念ながらこれは学生の特権で、一般の方はご参加いただけませんのであしからず。次回も味噌の話が続きます。

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