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〈世談〉 熊本地震1年

(2017年4月16日) 【中日新聞】【朝刊】【その他】 この記事を印刷する

 熊本市内の仮設住宅に暮らす女性Mさん(51)が倒れたのは、昨年11月のこと。母親と買い物に行った帰りに、住宅前の駐車場で突然、意識を失った。脳出血だった。

 Mさんの自宅は1年前の熊本地震で全壊。同居の父は脳梗塞の後遺症があり、母は初期の認知症。大変な避難生活の中、Mさんは医療福祉のサービスをうまく使い、きめ細かな介護を続けていた。その姿を紙面で紹介してわずか1カ月後。信じられない暗転だった。

 翌月、入院先を見舞うと、寝たきりで左手がわずかに動くだけだった。支えてきた両親は施設に入所。本人のリハビリも先が見えない。涙を流すMさんに、慰めの言葉が見つからなかった。以来ずっと気にかかっていたが、先週主治医に経過を尋ねてみて驚いた。脳の血管を改善する手術を受けた後、歩行訓練を頑張り、今では400メートルも歩けるという。やっぱり、すごい人だ。

 震災の被災者が健康を害するケースは多い。被災地には、表向きの被害の数字だけでは見えない悲劇がたくさんある。そして、くじけずに頑張る人たちがいる。震災を過去の問題にせずに、今を見つめていくことが大事だ。(編集委員・安藤明夫)

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