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退院し地域と共に暮らせたら 筋ジス男性 自立を決意

(2017年4月20日) 【北陸中日新聞】【朝刊】【その他】 この記事を印刷する

「重度訪問介護」金沢市に申請

画像「一人暮らし」に向け、適切な介護法を学ぶ筋ジス患者の男性(下)とボランティア看護師ら=金沢市の医王病院で

 筋肉が徐々に衰える難病「筋ジストロフィー」を患い、金沢市の医王病院に入院している男性(44)が、国の自立支援制度「重度訪問介護」を受けるための手続きを進めている。長時間介護が必要な人のもとにヘルパーを派遣し、生活を支援する制度だが、35年余りにわたる長期入院患者の申請は全国的にも珍しく、金沢市では初めて。男性は地域の人たちに支えられながら、病院外で過ごす「一人暮らし」に憧れている。(蓮野亜耶)

 男性は5歳でデュシェンヌ型筋ジストロフィーと診断され、8歳で入院。今は、眼球や唇以外、自力で動かすことは難しく、2012年からは気管切開をして人工呼吸器を使っている。

 もともと病院外での生活に強い憧れがあった。12年4月、体調を崩した際、一時的に心停止に陥った。病状は回復したが「病院外の世界を知らないまま、人生を終えたくない」と思うように。国の制度を知り、勇気を出して退院を決意した。

 まずは支援団体に詳細な介護記録の作成を依頼。食事や排せつの介助、呼吸器の取り扱い、服薬をはじめ、通院時を含む外出時の介助など詳細なデータを集めている。申請書類をそろえ、市へ介護費の支給を求めている。

 男性は一人暮らしを想定し、どのような支援が必要かを把握する宿泊体験にも取り組む。「自分の部屋」と仮定した別の病室に移り、ボランティア看護師らの協力を得ながら、呼吸器の使い方、ベッドから車いすへの移乗の仕方を学ぶ。月に一度は主治医と退院後の課題を洗い出す作業も。自身の症状に合った介護マニュアル作成を着々と進める。

 男性は看護師やヘルパーを募っているが、まだまだ足りない。支援団体で顧問の宮本研太弁護士は「地方では制度を知っている人が少ない。自立して生活するには看護師の協力が欠かせない」と話している。

普通に生きたい− 残りの人生かける

 障害のあるなしにかかわらず、普通に生きたい−。

 35年余り入院生活を続ける男性の生きがいは囲碁だ。男性が通った金沢市内の特別支援学校で教員から教わった。県内の大会に出場した思い出がある。

 しかし、卒業後は病状が進み、外出する機会が激減。治る見込みのないとされる病気に目標も持てず、無気力になった。

 2012年4月。誕生日だった。盲腸で容体が急変。一時的に心臓が止まる経験をした。一命は取り留めたが、食事がとれなくなるなど自分でできることが減り、助かったのに生きていることがつらくなった。

 失意の中、インターネットで同じ病気の患者がどのように過ごしているのか、調べ始めた。障害があっても地域の人々に支えられて暮らす人がいると知った。「自分の人生だけでなく、同じ障害者の生き方にも無関心だったことを後悔した」。病院外で暮らすという目標を抱いた。

 「自立できたら障害者同士が助け合えるような団体をつくりたい」。障害があっても地域で生きたいと願う人のために残りの人生をかける決意だ。

 男性の支援団体は、善意を募る口座を開設した。ゆうちょ銀行318 普通2076339 口座名義「地域で暮らすためにみんなで考える会」。問い合わせは、金沢税務法律事務所=電076(262)3628=へ。

 重度訪問介護 障害者総合支援法に基づくサービス。6段階の障害区分で4以上の重度障害者が自宅で入浴、食事、排せつ、外出時の支援など総合的な介護を受けることができる。市町村が支給決定を行う。昨年6月、長期入院者でも利用できるようになった。

 デュシェンヌ型筋ジストロフィー  遺伝性の疾患で、筋ジストロフィーの中でも最も患者が多い。筋肉の繊維が壊れ、運動機能が低下する。有効な治療法はないとされている。

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