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福島 埋もれるがん 15年に診断の男児 報告されず

(2017年4月23日) 【中日新聞】【朝刊】【その他】 この記事を印刷する

経過観察で調査対象外に

画像県民健康調査の検討委員会で、甲状腺がんの問題などを話し合う専門家ら=福島市で

 東京電力福島第一原発の事故後に甲状腺がんと診断された福島県の4歳男児(事故当時)の事例が、事故との因果関係を検討する同県の県民健康調査検討委員会に報告されていなかったことが分かった。男児は、県民健康調査の甲状腺検査で「経過観察」となり、その後の調査は対象外になっていた。民間団体「3・11甲状腺がん子ども基金」(東京)の崎山比早子(ひさこ)代表理事は「経過観察になった人はこれまで延べ2500人以上いる。他にも報告されていない事例があるのではないか」と懸念する。(片山夏子)

未報告ほかにも?

 県民健康調査の甲状腺検査では、1次検査で一定以上の大きさのしこりなどが見つかると、2次検査を受ける。悪性や悪性疑いでなければ経過観察となり、通常医療に移って調査の対象から外れる。

 子ども基金によると、県内に住むこの男児は2014年に2次検査で経過観察になった後、15年後半に甲状腺がんと診断され、昨年前半に県立医科大で手術を受けた。甲状腺がんと診断された事例では、これまでの最年少になる。

 2年前の検討委では、経過観察後にしこりなどが悪性化したケースが出た場合、県立医科大側は「(調査とは)別枠での報告になると思う」としていた。しかし、男児の例は県民健康調査の発表に入らず、検討委への報告もなかった。

 県民健康調査では、それまでの統計から推定される数十倍の人数の甲状腺がん患者が見つかっているものの、検討委は昨年3月、「総合的に判断して放射線の影響とは考えにくい」との中間まとめを発表。理由として、(1)被ばく線量がチェルノブイリ事故に比べ小さい(2)放射線影響を受けやすい5歳以下で見つかっていない−などを挙げた。その後、甲状腺がんの5歳児(事故当時)が見つかったが、見解は変わっていない。

 1万例近く甲状腺の手術をしてきた検討委の委員、清水一雄・金地病院名誉院長(69)は「原発事故との因果関係は今後も検証が必要。事実を知らなければ議論できないので、患者が確認されたら何らかの形で報告してほしい」と指摘する。

「制度的に不可能」

 清水氏は検討委で、全県民に手帳などを配って健康状態をフォローすべきだと提案したが、実現していない。県民健康調査の受診率も下がっている現状も挙げ、「せめて検査を受けた人の情報は個人情報に配慮した形で、報告が上がるようにしてほしい」と要望する。

 これについて、福島県立医科大は「2次検査で悪性ないし悪性疑いと判断されなかった症例すべてについて、診療情報を網羅的に集めることは制度的に不可能」とした。

 福島県県民健康調査課の担当者は「経過観察後の情報を、患者や受診した病院から提出してもらうのは難しい」とした上で、「調査の枠に入ってこない事例があることは把握していた。制度的に公表できるかも含め、検討委で議論してもらう」と話した。

福島県の県民健康調査

 福島県の県民健康調査 原発事故後、県立医科大に委託して、甲状腺検査と健康診査、こころの健康度・生活習慣に関する調査、妊産婦に関する調査を実施している。甲状腺検査は事故当時18歳以下と、事故後2012年4月1日までに生まれた(県外避難者も含む)計約38万人が対象。県は当時5〜18歳の185人が昨年末までに、がんやその疑いと診断されたと発表している。

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