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1歳未満 蜂蜜与えないで 乳児ボツリヌス症で6カ月男児死亡

(2017年4月25日) 【中日新聞】【朝刊】 この記事を印刷する
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 東京都の生後6カ月の男児が蜂蜜の摂取が原因で死亡したとみられることを受け、厚生労働省などが1歳未満児に蜂蜜を与えないよう注意を促している。蜂蜜には強力な毒素を出すボツリヌス菌が混入していることがあり、消化器官が未熟で腸内環境が整っていない赤ちゃんが口にすると、乳児ボツリヌス症になる恐れがある。ただネット上では、蜂蜜入りの離乳食のレシピが紹介されるなど危険性の周知徹底がされていない。 (細川暁子)

 都の発表によると、男児は2月にけいれんと呼吸不全で救急搬送され、乳児ボツリヌス症と診断された。3月末に死亡し、男児の便や自宅の蜂蜜からボツリヌス菌が検出された。男児は生後5カ月ごろからジュースと一緒に1日2回、計約10グラムの蜂蜜を与えられていた。蜂蜜のラベルには1歳未満には与えないよう注意書きがあったが、家族は「与えてはいけないと知らなかった」「体に良いと思ってあげていた」と話していたという。都によると、統計で確認できた1986年以降、乳児ボツリヌス症は全国で36例あり、死亡は初めてだった。

 感染症に詳しい小児科医で横浜市の「なごみクリニック」院長の武井智昭医師によると、ボツリヌス菌は殻で覆われた「芽胞(がほう)」と呼ばれる状態で土や水の中に存在。土ぼこりなどで芽胞が舞い上がって蜂や巣箱に付き、製造過程で蜂蜜に混入することがある。菌は酸素が少ない場所を好むため、蜂蜜入りの瓶など密閉容器で増殖しやすい。120度以上で一定時間加熱すると死滅するとされるが、家庭の調理では難しい。

 乳児が菌の芽胞が含まれた蜂蜜を摂取すると、腸内で発芽して強い毒素が排出される。1歳未満は免疫が弱く消化吸収機能も未熟なため、特に菌が増殖しやすい。1歳以降は、腸内細菌が増えていくため、菌の発芽や繁殖を抑えられるという。

 菌の毒素は筋力を衰えさせ、感染すると腸の働きが弱くなる。乳児ボツリヌス症の初期症状は3日以上の便秘が続くことが特徴で、次第に哺乳力が弱くなったり首や頭を支えられなくなったりする。

 ボツリヌス菌は蜂蜜だけでなく野菜の表面などにも付着する可能性があり、国立感染症研究所によると、過去の症例で自家製野菜のスープや井戸水が原因と推定されたケースもあった。

菌が増殖、腸にダメージ ネットに誤ったレシピ

 厚生労働省は1歳未満に蜂蜜を与えないよう1987年に各都道府県に通知を出し、今回の死亡事故を受けて改めて注意喚起を行った。母子手帳にも注意書きがあり、乳児健診などでも指導されている。

 約70の蜂蜜業者が加盟する一般社団法人「全国はちみつ公正取引協議会」によると、商品に注意ラベルを貼る義務はないが大半の業者が1歳未満に蜂蜜を与えないよう表示している。

 ただ、インターネットのレシピ紹介サイトでは離乳食に蜂蜜を使った調理例が多数掲載されている。

 武井医師は「ネットのレシピには誤った情報も多く、赤ちゃんの祖父母世代では危険性を知らない人も多い。蜂蜜に限らず、抵抗力の弱い赤ちゃんが口にする食の安全性について、消費者には正しい情報を見極める力が求められている」と話している。

画像強力な毒素を持つボツリヌス菌(東京都福祉保健局提供)

 ボツリヌス菌 「自然界で最強」と言われる毒素を産出。大人の場合は、体内に「芽胞」と呼ばれる状態で菌が入っても腸内細菌の働きで発芽は抑えられる。大人の食中毒では血清による治療も行われるが、乳児は副作用が懸念されるため菌が体外に排出されるのを待つしかない。乳児ボツリヌス症の致死率は1〜3%程度とされる。

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