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〈生活部記者の両親ダブル介護〉(15) ベッドで楽しむ花見

(2017年4月26日) 【中日新聞】【朝刊】【その他】 この記事を印刷する

桜の枝持ち、父母の元へ

画像桜をめでる父と母。せめて紙面では2人並んで

 これも一種の「共謀罪」か。桜が満開の日曜日、弟(45)と共にはかりごとをめぐらす。「桜の枝を折ってこい」。首謀は私。実行は弟。だが、弟は枝を折るのは忍びないと、ちぎれかけた小枝を「助けてきた」と言う。人々の手に触れたからであろうか。ちぎれた小枝はいくつかの花を付けながら、水を入れた紙コップに保護されていた。プラスチックの上ぶたの飲み口が、枝を挿すのにちょうどいい。

 「準備行為」も整った。本当は、父(80)を施設から連れ出して母(81)のいる病院へ行き、「一家で花見」といきたかった。だが、父は微熱が下がったばかり。なので2部構成とする。

 施設での一次会。「外は満開やよ」と弟は桜を見せるが、父の目は私が持つコンビニ袋に注がれている。「花より団子」ではあるが、今日はクリーム入りの洋菓子。「甘ければ何でもいいんや」と父。「では、花見酒も」と私。父におちょこを渡し、3分の1ほど注ぐ。「うまいな…」と父。酔わすわけにはいかない。せがむ父をちびちびとなだめながら一次会を終える。

 花見客でごった返す辺りを避けながら車で二次会へ。途中渡る川の堤も満開だ。この土手で親戚一同で花見をしていた昔を思い出す。兄弟共に家を出て、そんな習いも絶えて久しい。

 母のいる病院に着いた。兄弟そろうのは久しぶり。弟が母に桜を差し出す。「いっぱい咲いとるよ」と弟。「きれいやねえ」と母。母はベッドから伸ばした右手を、紙コップの脇でかすかに揺らす。「本当にきれいやねえ」。気が付いた。母は花をなでているつもりなんだ。(三浦耕喜)

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