つなごう医療 中日メディカルサイト

イ病教育の記録 後世へ 富山「語り継ぐ会」が本出版 授業の歴史や現状調査 掲載

(2017年5月7日) 【北陸中日新聞】【朝刊】【その他】 この記事を印刷する
画像「イ病教育の最前線をまとめた」と話す向井嘉之さん=富山市内で

 記憶から記録へ。富山県のイタイイタイ病(イ病)が被害者の高齢化で記憶継承が課題となる中、県内の市民団体「イタイイタイ病を語り継ぐ会」が、学校や市民向け教育を主題にした「イタイイタイ病と教育 公害教育再構築のために」を出版した。裁判や患者に関する書籍は多いが、教育を取り上げたものは珍しいという。(山本真士)

 著者は、イ病の取材を続ける同会代表の向井嘉之さん(73)=富山市豊島町=とイ病教育に携わる県内の大学や高校教員ら7人。

 学校教育では1971年に県内で初めて本格的なイ病の授業をしたとされる高岡市志貴野中学校を紹介。公害教育に風当たりが強い状況で教諭が取り上げたきっかけや生徒の反応などを、インタビューや文献を通じて臨場感豊かにつづる。

 現状の調査結果も掲載。一部の中学や高校が学習時間を確保できていないことや、教科書には記述が少なく、発生年などに誤りが散見されることを報告している。市民教育では50年にわたる住民運動などを踏まえ、市民活動の必要性を呼び掛けている。他の四大公害病の三重・四日市ぜんそく、熊本・水俣病、新潟・水俣病の患者に寄り添う人々の寄稿も収録している。

 今回の出版は、体験を語れる患者が少なくなり、歴史や教訓を後世に伝える手段として学校や市民教育の重要性が増してきたのに加え、福島第一原発事故をきっかけに長く下火だった公害教育に再興の兆しがあることも後押しになった。

 向井さんは「『記憶の時代』から『記録の時代』に入った今、イ病の歴史を後世に正しく伝えていけるかどうかの瀬戸際にある。特に学校の先生に参考にしてほしい」と願う。

 A5判340ページ。税込み1728円。1000部発行。県内外の書店で販売、同会でも注文を受ける。書籍名をテーマにした市民向け講座も今秋に開く予定。問い合わせは向井さん=電076(438)2830=へ。 

中日新聞広告局 病医院・薬局の求人