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名古屋第二日赤 「周産期脳卒中センター」設置 24時間の診断、治療に対応

(2017年5月9日) 【中日新聞】【朝刊】 この記事を印刷する

妊産婦、年200人発症 転送先なく死亡例も

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 名古屋第二赤十字病院(名古屋市昭和区)は4月、けいれんを起こすなど脳の異常が疑われる妊産婦を受け入れる「周産期脳卒中センター」を設置した。脳卒中の妊産婦を受け入れられる体制がある病院は少なく、転送先が見つからずに妊産婦が死亡する事例が相次ぎ、社会問題となった。脳卒中かはっきりしない症例でも、24時間365日受け入れる体制を整え、地域の周産期医療を支える考えだ。(稲田雅文)

 「母親が出産のときに命を落とすことは社会的に大きな問題。死亡したり、後遺症が残ったりする母親が一人でも減ってくれたらという思いでセンターを立ち上げた」。先日、同病院が開いたセンター開設記念の講演会。センター長を務める加藤紀子・産婦人科部長は設置の狙いを話した。

 日本脳卒中学会の調査によると、妊産婦の脳卒中患者は全国で年200人ほど。死亡率は9%と高く、分娩(ぶんべん)前後の発症が多い。日本産婦人科医会などの調査では、2010〜15年の妊産婦死亡266人のうち、16%が脳卒中など脳の障害で、出血(23%)に次ぐ2番目の原因だった。

 妊産婦の脳卒中は、もともとの脳の血管の異常や妊娠による体の変化が原因で起こる。産婦人科医に加え、脳神経外科や神経内科など、「複数の診療科の医師が連携して対処しないと治療が難しい」と安井敬三・第一神経内科部長は話す。

 第二日赤が数年前に対処したケース。愛知県内の産科医院に入院した20代女性が、帝王切開で出産後、頭痛を訴えた。手術から4時間後に意識を失って口から泡を吹いたため、搬送されてきた。

 妊産婦のけいれんには、妊娠高血圧症の人がなることが多い「子癇(しかん)」と呼ばれる発作がある。けいれんを起こした後、元通りに回復することが多く、「よくあること」と様子を見る産科医師もいる。この女性も子癇発作の疑いだったが、念のため運ばれた。

 第二日赤では、救命救急センターに脳神経外科と神経内科、産婦人科、麻酔科の医師らが集まって対応。視野が欠ける症状が見つかったため脳卒中を疑い、脳のコンピューター断層撮影(CT)で脳出血が見つかった。緊急手術の結果、手足のまひなどの後遺症はなく退院できた。

 妊産婦がけいれんを起こした場合、速やかに子癇なのか脳卒中なのかを診断しないと命にかかわる。診断には脳の画像検査が欠かせず、設備がある病院に転送する必要がある。

 出産前の脳卒中の治療には、生まれてくる子どもへの対応も必要になる。脳の手術の前に帝王切開で出産させ、早産の場合は、新生児集中治療室(NICU)で管理する必要がある。

 センターでは、これらの医師や検査技師が24時間体制で待機。NICUが満床でも、患者を受け入れる。だれでも等しく高度な医療を受けられるよう、最初に脳出血の有無を調べるなど診療手順を整えた。高須俊太郎・第三脳神経外科副部長は「緊急性がある状態なのかの判断は難しい。もしかしたら、という段階でとにかく送ってほしい。実は何もなくてすぐ帰ってもらえるならそれでいい」と話す。

 センターのアドバイザーを務める大野レディスクリニック(愛知県岩倉市)の大野泰正院長は「愛知県での調査で、妊産婦の脳卒中の7割は産科医院か自宅などで起こっており、スムーズに搬送することが求められる。産科医院に安心感を与えられるこうしたセンターが、全国に整備されるべきだ」と訴える。

 妊婦転送拒否問題 2006年8月の深夜、奈良県の当時32歳の女性が分娩のため入院中の町立病院で頭痛を訴えて意識不明になり、けいれんを起こした。産科医は子癇と診断し、転送先を探したが、県内や大阪府の19病院に受け入れを断られた。朝方に大阪の基幹病院へ運ばれると脳出血が見つかり、8日後に死亡した。東京都でも08年、脳出血を起こした妊婦2人が相次いで複数の病院に受け入れを断られ、1人が死亡、1人が重体となった。

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