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「幸せな最期」問い続ける 南砺市民病院 清水幸裕さん

医人伝

(2017年5月9日) 【中日新聞】【朝刊】 この記事を印刷する

南砺市民病院(富山県南砺市) 院長 清水幸裕さん(59) 

終末期の意思を確認する指示書を作成した清水幸裕さん終末期の意思を確認する指示書を作成した清水幸裕さん

 高齢化に伴う「多死社会」を迎え、終末期患者に対する医療のあり方が問われる時代。「患者にとって何が幸せな選択なのか、私たちは最大限おもんぱかる必要がある」。終末期患者に対し、延命治療などに関する意思を事前に確認する指示書を独自に作成し、運用している。

 富山市出身。高2の時、先天性心疾患だった父親を手術した医師を「神様だと思った」。それを機に医師への憧れを強め、富山医科薬科大(現富山大)医学部に進学。卒業後は消化器内科医として生体肝移植にも携わり、京都桂病院(京都市)を経て、2008年に富山県南砺市民病院に着任した。

 末期の肝臓がん患者などを診ることもあったが、常に疑問だったのが「望ましい最期の迎え方」だった。倫理や法の基準があいまいなまま、適切な延命治療や尊厳死のプロセスが確立されていない現状に「ずっとモヤモヤしていた」。

 そこで、14年の院長就任を機に、院内に臨床倫理委員会を立ち上げた。医師や看護師、リハビリスタッフのほか、倫理や法律の専門家も招き、終末期医療に関する倫理問題について検討を重ねた。16年4月、米国の先進事例を参考にした事前指示書を作成した。

 事前指示書には質問が10項目ある。まず心肺が止まった場合に蘇生措置や人工呼吸器導入をするかを聞き、続いて症状別に胃ろうや輸血、人工透析の希望を尋ねている。「大切な人に伝えたいこと」「残された人生を過ごしたい場所」といった項目もあるのが特徴だ。

 しかし、現在は「なかなかうまく機能していない」と話す。医師側から記入を強制することはできず、希望者を待つほかないため、これまでの利用者は数えるほどという。指示書自体にも「終末期に本人の希望が変わった時にどう判断するのか」「患者自身が予期していた状況と異なった場合どうするのか」などの問題点が残る。

 それでも、「医師とのやりとりを通して死に対する準備をしてもらうことに意味がある」と力を込める。今後は周知と住民意識の調査を狙い、地域の老人クラブなどを回って地道に啓発活動に励むつもりだ。

 休日も自宅で資料を作ったり、勉強したりすることが多い。「自分のためだけに使う時間はあまりないですね」と笑う。(渡辺健太)

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