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原因不明の腫れ 診察を 難病「HAE」 きょう啓発デー

(2017年5月16日) 【中日新聞】【朝刊】【その他】 この記事を印刷する

医師の認知も低く「命の危険も」

画像15年にわたり病名が分からないままHAEに苦しんできたと話す主婦=岐阜県可児市で

 顔や手足、胃腸などが繰り返し腫れる「遺伝性血管性浮腫」(HAE)は、のどが腫れた場合、適切な治療をしないと致死率は30%に及ぶ。国が難病と認めて20年以上たつが、医師にも詳しく知られていない。16日は「HAEの日」。患者や専門医らは啓発デーを前に「病気を知って」と呼び掛けている。(岐阜報道部・小倉貞俊)

 「15年間、病名を知らず苦しんできた」と明かすのは、岐阜県で数人はいるとされる患者で可児市の主婦(43)。24歳の時、買い物中に腹部の激痛と吐き気を催した。「胃腸炎」と診断されたが、その後も年に2、3回は失神を伴う激痛に見舞われた。緊急入院先で腹膜炎と疑われ、手術されかかる誤診もあった。

画像堀内孝彦さん

 HAEの認知度は医療関係者の間でも低く、医師の半数超が「知らない」と回答した調査もある。数日で痛みや症状が治まることもあり、HAEを研究、啓発するNPO法人血管性浮腫情報センターの堀内孝彦代表(九州大別府病院長)は「『原因不明の浮腫』として診断がつかないケースが多い」と明かす。5万人に1人が発症し、国内に少なくとも2500人の患者がいるとされるが、約400人しか確認されていない。

 4年前にインターネットでHAEを知り、主治医に相談し、診断が確定した。今は予防薬で症状は治まっている。「いつ発症するのか分からない恐怖から逃れられた」と安堵(あんど)したが最近、小学生の子どもも同じ病気と判明。新たな悩みを抱えている。

 浮腫はストレスや外傷、抜歯などのほか、風邪、生理などをきっかけに発症。荷物を持つ手のひらや、長時間立っていた足の裏が腫れる人も。「HAEと診断できれば症状はコントロールできるが、知らないままだと危険な病気」(堀内代表)という。

 のどの浮腫は窒息の危険があり、ドイツなど海外では即効性がある治療薬の自己注射が認められている。国内では治療薬を常備する病院は少なく、院外処方も認められていない。HAEの男性患者が、出張先でのどに浮腫を発症。現地の病院に薬がなく、命を落とした事例もあった。堀内代表や患者会「くみーむ」(事務局・福岡市)などは、国に治療薬の自己注射ができるよう要望している。

 堀内代表は「HAEは最近まで研究が進んでいなかったが、血液検査ですぐ診断できる。自覚症状があればぜひ受けて」と話す。くみーむ代表の伊藤さち子さん(66)=愛知県清須市=は16歳で発症し、5年前にようやくHAEと診断された。「苦しんでいる人は多いはず。多くの人に知ってもらえれば」

 くみーむは、HAEの日の16日から18日まで、電話=080(1544)5556=やメール=create23jp@yahoo.co.jp=で無料相談会を開く。

遺伝の確率50%

 遺伝性血管性浮腫(HAE) 厚労省が難病指定する原発性免疫不全症候群の一つ。遺伝子の異常でタンパク質がうまく働かず、血管内の水分が皮膚の下にしみ出し、体の各所の皮膚や粘膜が腫れる。胃腸で発症すると激痛や吐き気を伴う。のどの場合、気道がふさがり窒息死の危険がある。最初の発症は10〜20代が多く、50%の確率で遺伝する。同省は1994年、同症候群を特定疾患に指定。一定の医療費が補助される。

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