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患者との対話丁寧に 国立病院機構名古屋医療センター 片岡政人さん

医人伝

(2017年5月16日) 【中日新聞】【朝刊】 この記事を印刷する

国立病院機構名古屋医療センター(名古屋市中区) 病棟部長・外科医長 片岡政人さん(58) 

画像「難しい手術ほどイメージ作りが欠かせない」という片岡政人さん。流れを想像しながら手を動かし本番に備える

 外科医として喜びを感じるのは、手術を終えた患者が退院する時。「本当にうれしそうに帰って行く。それを見送るのがうれしい」と表情を緩ませる。

 専門は消化器外科。主に食道・胃・大腸のがん手術を担う。厄介なのは、食べ物の通り道の再建。大腸なら腸管と腸管を縫い合わせるが、うまくつながらず便が漏れ出る縫合不全が起きることがある。

 再手術となれば患者に大きな負担がかかる。一定の割合で起きる合併症だが、「起きないように努力することはできる」。起きた場合でも、適切に処置をすれば影響は最小限にとどめられる。だから術後も気を抜けない。患者の退院にやりがいや安堵(あんど)を感じるのはこのためだ。

 愛知県常滑市出身。中学の時に手塚治虫の漫画「ブラック・ジャック」の連載が始まった。天才外科医と患者の人間ドラマ。「どんな難病も華麗な技術で治すところにあこがれた」。名古屋市立大医学部卒業後、センターの前身、国立名古屋病院に。上司から誘われ、消化器外科一筋に歩んできた。

 今は中堅の医師を指導する立場。ただ、症例が少ないケースは自らメスを握る。手術は常に血管や臓器を傷つけるリスクを伴う。「大切なのは華麗さより丁寧さ。それが一番安全で時間も早い」と感じている。

 患者との面談も40分近くかけ丁寧に行う。「最も不安なのは何も分からないこと。合併症や再発の可能性を話すと皆さん一度は落ち込む。でも知っておくと前向きになれる」

 食生活の欧米化などで大腸がんは増加し、センターでの手術は年間百数十例。おなかに小さな穴を開けて行う腹腔(ふくくう)鏡手術は技術が進み、今では8割に及ぶ。出血や傷が少なく回復は早いが、視野が狭いといった欠点もある。「がんを取りきれないと判断したら迷わず開腹する」

 再発や転移が避けられないことも。食道がんを切除した40代の男性は「リンパ節も含めてきれいに取れた」と思ったが、がんが再発。急速に進行して亡くなった。家族から「長いお付き合いになると思ったのに残念です」と言われ、頼られていたことを痛感した。当時、男性には10歳の息子がいた。

 自らを振り返る。成人した長女が子どものころ、「熱を出すたびに生きた心地がしなかった」。外科医もやはり人の親だ。(小中寿美)

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