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定期健診の「診察」意味ある? 短くて形式的・・・期待外れ 内容は医師裁量、時間制約も

ホンネ外来

(2017年5月23日) 【中日新聞】【朝刊】 この記事を印刷する
画像働く人が受ける定期健康診断の診察=名古屋市内の病院で(一部画像処理)

 「胸の痛みを訴えたら『分からん』と言われた」「体の不調を相談したのに精神科へ行くよう言われた」。働く人が受ける定期健康診断で医師の診察に不信感を持ったとの意見が「ホンネ外来」に相次いで寄せられた。不信とまではいかなくても、わずか数分の診察に物足りなさを感じる読者はいるのではないか。診察の役割や医療者側の事情、受診者はどう臨むとよいかを探った。(小中寿美)

 愛知県の男性(49)は胸の中心に鈍い痛みを感じていた。健診の診察で医師に「体調は」と聞かれて答えると「わしゃ分からん。医者に聞け」。その時は「あなたも医者でしょ」と思っただけだったが、痛みが続いて内科へ行ったところ心筋梗塞と診断され、すぐ手術を受けた。健診の際は心電図でも異常はなく「まさか心臓の痛みとは思わなかった」と男性。診察が助けにならず「健診は意味がない」とさえ思うようになった。

 意見は1月に掲載し、4月には県内の女性(46)からも投稿があった。女性は健診で「3カ月ほど前から字がうまく書けなくなった」と相談した。脳梗塞になった友人が最初に気付いた異変と同じだったから。医師は問診票やエックス線の検査結果を見ながら「異常は見当たらない。身体的な問題ではない」と告げ、精神科の受診を促したという。

 2人の医師の対応は適切か否か。県内の民間病院の健診センター所長(62)は、男性のケースについて「専門分野でなければ、はっきりしたことは言えない」と医師の立場に配慮しつつも、「何科にかかるとよい、という助言はすべきだった」。胸が痛む病気は他に肋間(ろっかん)神経痛などがあるが「最も危険なのは心臓の病気。自分なら循環器科の受診を勧める」という。

 一方で「心配な症状があるなら、やはり病院に行かないと」と受診者側にも一言。「医師の発言はどちらも『病院で診てもらった方がいいですよ』という趣旨だったのでは」。ただ「受診者が勘違いしないよう、丁寧に説明する努力は必要だと思う」と話した。

 定期健診は、従業員の健康状態を把握し、働けるかどうかを判断するため、事業者側の実施が労働安全衛生法で定められている。

 治療中の病気や自覚症状について医師が聞くのは正式には「問診」。首のリンパ節を診たり心音を聴いたりする「診察」と同時に進められる。問診・診察は必須項目で、血圧測定や心電図検査などの後に行われるのが通常の流れだ。医師が受診者と接する数少ない機会であり、産業医科大産業医実務研修センター(北九州市)が監修した若手医師向けのマニュアルは「健康状況の総合的判断に欠かせない」と意義を説明する。

 ところが現実的には、医師は厳しく時間を制約されている。センターによると受診者一人にかけられる時間は平均約2分。「職場を離れる時間を短くしたいという事業所の意向がある」からで、仕事が忙しくて嫌々来る受診者も多い。その半面、テレビやインターネットの影響で健康に興味を持つ人が増え、質問する受診者も増えているという。

 マニュアルの改訂作業に携わった同大の医師立石清一郎さん(42)は「通常の診察とは異なるノウハウや心構えがいるのに、ほかの検査のように適切に行われているかどうかの検証はない。何をどう行うかは医師の裁量に委ねられており、評価のしようもない」と問題点を指摘する。

 現状では医師のやり方次第で、マニュアルは「医師が工夫をすれば、よりよい健診を提供することは可能」と断言。健康管理にとどまらず「受診者にとって、健康を振り返るきっかけの場になれば素晴らしい」と投げかけている。

普段通り過ごし受診 浜松の聖隷健康診断センター・武藤繁貴所長

武藤繁貴所長武藤繁貴所長

 労務管理のためとはいえ、定期健康診断は、日々忙しい従業員にとって健康状態を知って生活を見直すきっかけになるのだから生かさない手はない。正しい結果を得るためのポイントや受診後の対応などを聖隷健康診断センター(浜松市)の武藤繁貴所長(50)に聞いた。

 血液検査は10時間の絶食が基本。焼き肉など脂っこいものは中性脂肪の数値を上げるので前夜は避けます。胃バリウム検査がある場合は、水でも画像に影響が出るので当日は控えます。持病の薬は当日朝までに少量の水で服用しましょう。

 飲酒も前夜から禁止。たまに2週間ほど禁酒して肝機能の数値をよくする人がいますが、いいものを見せられても正しい判断ができません。いつも通り過ごすことが大切です。激しい運動や日焼けも肝機能の数値を上げるので避けた方が無難です。

 健診で高血圧や糖尿病などの生活習慣病が分かります。「要受診」「要精密」とある場合は「会社に何も言われないから」などと放置せず受けるように。重い病気を見落とさないためです。がん検診がオプションで付けられる場合は積極的に活用してください。早期発見できれば治る可能性も高まります。

 数値の変動に一喜一憂する必要はありませんが、基準値を外れたら生活習慣へのアドバイスに目を通します。影響が大きいのは食事。内容を見直すなど、できることから始めましょう。

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